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インタビュー

琉球アンダーグラウンド

沖縄への深い愛と最先端のクラブ・サウンドが出会った時、また新たな〈島唄〉が生まれた


  3年ぶりとなる琉球アンダーグラウンドのニュー・アルバム『ウムイ』。〈ウムイ〉とは、沖縄の言葉で〈思い〉という意味である。沖縄の島人たちのウムイ、そして沖縄を好きなあらゆる人たちのウムイ。そんなたくさんのウムイを込めた作品を完成させたのは、2人の異国人だ。イギリスはニューカッスル出身でいまは沖縄に暮らすキース・ゴードンと、カリフォルニア在住の米国人であるジョン・テイラー。2人は98年に沖縄で出会い、このユニットをスタートさせた。そして、ブレイクビーツと沖縄音楽を融合させた2002年発表の『琉球アンダーグラウンド』でアルバム・デビュー。以来、作品を通じて新しいタイプのオキナワン・ミュージックを内外に示してきた。

 長く歌い継がれてきた沖縄民謡をベースに独自のサウンドを奏でてきた彼らだが、今回のアルバムでは島々に伝承されるわらべ歌を数多く取り上げている。わらべ歌とクラブ・ミュージックという組み合わせが、まず興味深い。とりわけここではダブの要素が重要な役割を担っていて、それがまた新鮮だ。

「ダブ処理を効かせたエレクトロやアフロビートが琉球アンダーグラウンドに馴染むかどうか、ちょっと心配だったけれど、チルアウト的というのかな、リラクシンなサウンドに仕上がったと思うよ」(キース・ゴードン:以下同)。

 さらに彼はこう続ける。

「僕の音楽性は長年暮らしてきた沖縄の土地によって大きく変化したんだ。僕は沖縄本島の北、やんばるのほうに住んでいる。那覇は都会で、空気は東京と変わらない。でも、コザ(沖縄市)よりさらに北へ行くと空気が変わるんだよ。景色も何もかも一変するのさ。森が広がる。緑が濃くなる。山がある。そこは、虫や動物たちの世界だ。大地のリズムを感じるよ。素の自分に戻れる場所なんだね。だから、僕らの音楽スタイルは都会的なクラブ・サウンドかもしれないけど、沖縄の山や森の空気から生まれてきた音でもあるのさ」。

 沖縄では老若男女みんなが音楽を愛している。歌ったり踊ったり奏でる人がたくさんいる。音楽が日常生活に、人生に、くっついている。半プロと言えばいいのか、別の仕事をしながらも真剣に音楽を演っている人や、昼は会社員で夜はステージ活動をしている人も多く、島にはいろんな〈島唄〉がいまも生き続けている。独自のレーベルも数多くあり、ジャンルやスタイルはさまざまだが、そのどれもが音楽と沖縄を愛する気持ちで溢れている。そして、琉球アンダーグラウンドのサウンドもまた〈島唄〉であると感じるのだが、どうだろう? なぜならキースとジョンの2人は、島唄を奏でてきた先人たちと同じように、琉球の島々へのウムイを奏でているのだから。

▼琉球アンダーグラウンドの作品を紹介。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2009年05月07日 16:00

更新: 2009年05月07日 17:26

ソース: 『bounce』 309号(2009/4/25)

文/今井 栄一