ジムが絶好調ななか、かつての最強軍団はどうなってる?
90年代からビッグLやメイスと活動してきたハーレムの〈エリート〉、キャムロンを中心にジュエルズ・サンタナやジム・ジョーンズらが集まったクルーがディプロマッツ~ディップセットだ。そのバランスはあくまでもエースのキャム、若頭のジュエルズ、B級っぽいジムという見え方で成り立っていた(当初は〈ライダース・ファッションの変な人〉という扱いだったのだ!)のだが、ジムがにわかに旬の存在となった2006年、エースの動きは停滞していく。それに伴って結束力も弱まり、クルーは分散状態にある……果たして〈音楽以上〉なクルーの復権はありえるのか。まもなく登場するキャムの新作に期待しながら、ここでは主要メンバーの近作を紹介しておこう。
DIPSET 『More Than Music Vol. 2』 Diplomat/E1(2007)
いまのところ最後のクルー作品。リリース前にはキャムとジムの不仲説も流布されて話題作りに寄与したが、実際の不仲を活かしたスタントだったとは……。ジムがバードギャングの子分らを引き連れて参加したほか、ヘル・レルやJRライターらの中堅どころが奮闘している。
FREEKEY ZEKEY 『Book Of Ezekiel』 Diplomat/Asylum(2007)
しばし獄中にいたクルーの古参メンバーは今作でメジャー・デビュー。大股のラップも含めて南部志向が強く、後にディップセットのサウス支部を設立。現在は730ディップを率いながらバードギャングにも加入しているが、ジムとキャムの間で板挟みになっているようだ。
40CAL 『Mooga』 Gold Dust Media/!K7(2008)
自身のレーベル=マネー・メイカーを運営し、精力的なリリースが続くせいでどれがミックステープかわからなかったりする40カル。ドー・ボーイやトラックディーラーズら馴染みの面々がパワフルなビートを提供した今作は身の詰まった出来で、特にJRとの“Harlem Shuffle”が良い。
『Jim Jones & Skull Gang Present A Tribute To Bad Santa』 Skull Gang/E1(2008)
ジュエルズ・サンタナの率いるスカル・ギャング初の公式リリース盤。コメディアンのマイク・エップスをホストに据え、ジムやチンク・サンタナらもちょこっとサポートしたコンピ的な内容だ。しかしクリスマスが好きな人たちですね。
JR WRITER 『Cine Crack』 Writer's Block/Babygrande(2009)
ジムの新作とほぼ同時期に投下された〈ドミニカン・プリンス〉のニュー・アルバム。ラップ馬鹿的な暑苦しさがムンムンと漂ってくるホットな内容で、注目のアラブ・ミュージックによる鋭角的なトラックもエグくてカッコイイ。これはオススメしたい。
HELL RELL 『Get In Line On Get Lined Up』 Hellz Kitchin'(2009)
限りなくストリート・アルバムに近いと思しきヘル・レルの新作。じっくり言葉を聴かせる苦々しい雰囲気はいつも通りで、ヤング・バックの参加というトピックもアリ。BDPの“I'm Still #1”を使った40カルとの賑やかなジョイントに嬉しくなってしまう。
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