AUTOKRATZ(2)
ビッグになりたいかって?
素直に影響を認めようとはしないのはご愛敬にしても、これまでの順調な活動が功を奏してか、デヴィッドとラッセル各々の趣向や個人的にやりたいことを表現する余裕が、少しずつだが出てきているような雰囲気が今回の『Animal』にはある。それは先頃フル・アルバム『THIS IS MY SHIT』を発表した日本の盟友、80kidzの方向性を彷彿とさせるものだ。
「80kidzは大好きだよ。彼らが持つメロディーとアグレッシヴさのコンビネーションは、俺の心を鷲掴みにしたんだ。本人たちもイイ奴らでさ、けっこう長い友達付き合いなんだ」(デヴィッド)。
もちろんオートクラッツの魅力が最大限に発揮される甘いメロディーとラウドなパートが同居した“Stay The Same”“Past Your Heart”のような曲もあり、デビュー以来のオートクラッツ節も見つけることができる。が、それらも含めて全編にキャッチーなフックや親しみやすい旋律のある曲が並ぶ様子は、いままでのオートクラッツ像にはないスケールを感じさせるのだ。なかでも異彩を放っているのが、日本盤ボーナス・トラックとして収録されたプライマル・スクリーム“Swastika Eyes”のカヴァー。ベースラインのアレンジやタイトなビートにオートクラッツらしさを滲ませているが、疾走感やパンキッシュなノリは原曲を忠実に再現し、相当アグレッシヴな仕上がりになっている。
「(カヴァーした理由は)俺たちが政治的に興味を持っているものの多くを具体化した作品だったからさ。ジョージ・オーウェルの〈1984〉みたいにね」(デヴィッド)。
「それにこのトラックには力強いエナジーと深みがあるし、そのエナジーは俺たちがライヴの時にやることと見事に調和しているんだよ。オートクラッツそのものにフィットしているんだ。プライマルのマニのことは、故郷のマンチェスターにいた時から知ってるんだけど、彼もボビー(・ギレスピー)も俺たちのヴァージョンを気に入ってくれたんだ。嬉しいよね」(ラッセル)。
さて、そんな『Animal』を引っ提げて、いよいよヨーロッパ・ツアーをスタートさせるオートクラッツ。すでに一部のメディアではアンダーワールドやケミカル・ブラザーズ、ベースメント・ジャックスに続くダンス・アクトと目され、これを機会にメジャー・シーンへも一気に飛び出すのではと囁かれている。高いポテンシャルを秘めた楽曲群と、定評のあるライヴ・パフォーマンス、それに発言の端々から窺える2人の自信があれば、もはや成功は約束されたといっても大袈裟ではないし、より大きな存在になる可能性も十分なのだが。
「俺たちの未来? エレクトロニック・バンドのスタンダードを超えた存在になってるかもね。賢さとフィーリングを兼ね備えた、そして皆をクレイジーにさせるようなバンドに。ビッグになりたいかって? アインシュタインが言ってるだろ、〈成功者になろうとするな。むしろ価値のある存在であれ〉ってね」(デヴィッド)。
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