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インタビュー

RIHANNA

傷ついた。戸惑った。失った。泣いた。混乱した。哀しかった。大人になった。そして、沈黙は破られた。もう、歌でしか言えない。21歳のR指定な挑戦が幕を開ける……


  「『Good Girl Gone Bad』は、私がアーティストとして自分を表現しはじめた作品だった。でも新作はそれよりも大きく成長しているわ。もっとパーソナルで、率直に考えを語っているの。みんなは私がどんなことを考えているのか知らないから、私はそれを音楽のなかで表現するのよ」。

 公私共に前途洋々……のはずだったリアーナですが、2月のグラミー授賞式の直前に起こった恋人クリス・ブラウンとの一件は、順調なキャリアに急ブレーキをかけました。ツアーやCM出演はキャンセルになり、心の揺れから一度は復縁し、最終的には別れを選び……。が、「凄く音楽に戻りたかった」という言葉通り、彼女は新しい音楽を創造することに意識を集中して、壁を打ち破ったのです。そうして登場したのが4枚目のアルバムとなる『Rated R』。つまりは〈R指定〉ですが、これは当然彼女のイニシャルに引っ掛けたものですね。

 「そう、ダブル・ミーニングになってる。でも文字通りの〈制限された〉アルバムじゃなく、恐れ知らずで、少し成長した作品っていうこと。前作の時は19歳だったけどいまは21だから、歌う内容も変わったの」。

 先行シングルは暗い情感が渦巻くニーヨ作のスロウ“Russian Roulette”。「最初に世に出すのにパーフェクトだと思った」という理由だそうで、その選択自体も彼女が『Rated R』に与えた意味合いを窺わせるものではあります。ただ、楽曲そのものの出来に驚かされるのは、ドラムンベースを基盤にダブ・ステップも作り出すUKのチェイス&ステイタス(本誌前号の特集を参照!)を起用した先行プロモ曲の“Wait Your Turn”でしょう。重量級のダーク・ホップに乗せて情念を解き放つ、新しいリアーナの誕生です。彼らは同曲以外にもアルバムの序曲や“G4L”を担当していて、作品全体のトーンを取りまとめてもいます。

 「チェイス&ステイタスの音を聴いて〈これだ〉って思ったの。今回はもっとダークでエッジーなアルバムにしたかったんだけど、彼らと組むことでそれは達成できたと思うし、今回のニュー・サウンドの良い基盤になってくれた。彼らのビートを最初に他のプロデューサーにも聴かせて、やりたいサウンドに共通認識を持ってもらうようにしたの。前作と似たようなダンス曲ばかり貰ってたから」。

 そんな意識が浸透した結果か、“Umbrella”を手掛けたトリッキー・スチュワート&ドリーム組をはじめ、スターゲイト、ジャスティン・ティンバーレイク、ブライアン・ケネディといった馴染みの面々も、従来のサイボーグ・ポップ感覚をヨーロピアンな翳りやダビーな風情に置き換えつつプログレッシヴに前進させていて……そのどれもが、本当に凄まじく格好良い! ヤング・ジーズィをフィーチャーした次なるシングル曲“Hard”やスラッシュのギターが響く“ROCKSTAR101”などのコラボも最高です。一方では「いちばんエモーショナルでパーソナル」だという終曲“The Last Song”など、率直な感情を滴らせた楽曲もしっかりと主張しています。

 「私はラジオでかかるサウンドを変えたいの。いまは全部ダンス・レコードでしょ。それはやった。やったのは私たちよ。でも今回は、もっとアーティスティックで少しシリアスなことがやりたくて……この『Rated R』は私が表現したい私で、いまの私そのもので、私の体験でもある。どの曲も無防備で、どの曲にもオープンにさせられたわ。だから、このアルバムには凄く興奮してる。こういう曲で世のサウンドを変えるってことが、まさに私のやりたいことなのよ」。

▼『Rated R』参加アーティストの作品。

▼『Rated R』参加プロデューサーの作品。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2009年11月25日 18:00

ソース: 『bounce』 316号(2009/11/25)

文/出嶌 孝次