インタビュー

昨今のアーバン・ポップに見るRのトレンドセッターぶり

 2007年に発表されたリアーナの『Good Girl Gone Bad』がその年を代表する世界的なヒットに繋がった最大の要因は、ユーロ・ポップ的な意匠がUKをはじめとするヨーロッパ圏で大ウケしたことにあった。それから2年経ってシーンの様相を見れば、仮に日本でR&B/ポップ/アイドル/ダンスなどと分けられていようと、サウンドそのものの実体はどれも近いスタイルである。間違いなくリアーナのヒットがある種の歌モノ全体を〈Gone Bad〉させて新しいフォーミュラを定着させたのだ。

 そもそも昔からヨーロッパでは、スパイス・ガールズにしろシュガベイブスにしろ、人種によるセグメント以前にソウル/R&Bの素養を根底に標準装備したポップスが(本格的とされる)R&Bとさほどの距離感もなく受け入れられている例が多い。マックス・マーティンらシェイロン勢はもちろん、スターゲイトやブラッドシャイ&アヴァント、レッドワンらはそういった折衷マーケットに自然に対応してきたヨーロッパのクリエイターたちであって、彼らのUS進出がある種の化学反応を引き起こし、トリッキー・スチュワート&ドリームやポロウ、ウィル・アイ・アム、ブライアン・ケネディら先鋭的なUS勢を触発することは必然だったのだ。そんなわけで今度は『Rated R』の提唱する新スタイルが定着するのか、早くもシフト・チェンジしているレディ・ガガら大物の動向も含めて、やはりこのへんのポップスはおもしろくて刺激的でしょうがないのである。

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掲載: 2009年11月25日 18:00

ソース: 『bounce』 316号(2009/11/25)

文/出嶌 孝次

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