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インタビュー

INTERVIEW(3)――勝手なロマン

 

勝手なロマン

 

SEBASTIAN X_A2

 

――例えば、“フェスティバル”はアイリッシュなテイストであったり、曲によっては東欧風のヴァイオリンや南国っぽいスティールパンが入っていたりしていて、今作は、言わば無国籍なポップス作品だと思うんですけど、そういう音楽は通っていない?

真夏「どこかの音楽を通ってるっていうよりは、知らない国に思いを馳せているっていうのがあって(笑)。知らないところに行ってみたいとか、知らない土地に根付いたものを知ってみたいっていう気持ちがすごく強いので、それで行ってるんじゃないですかね? 脳内で(笑)」

沖山「たぶん、憧れだと思いますよ。ただなんとなくの……イメージ。もうちょっと南、とか」

真夏「もうちょっと赤道付近、とか(笑)」

沖山「そうそう(笑)。そんぐらいなんですよ、ホント。キーボードの歩里の話でおもしろかったのが、東南アジアあたりをめざしてたんだけど、沖縄ぐらいになっちゃった、とか(笑)。結構そういうことはありますね(笑)」

真夏「勝手なロマンなんです」

沖山「まあ、ホントにネイティヴなものが好きで、ネイティヴなものと同化したいとかは思ってなくて。ただ、勝手に知らない土地に憧れてそういう音楽をやっていても、たぶん日本の感じも出ちゃってると思うんですよね。そこはおもしろいなと思ってて」

――そうですね。無国籍なテイストがアクセントになっているというか。それって、どういうふうにアレンジを決めていくんですか?

真夏「大体は、妄想の世界から始まるんです。曲を作ってると、頭のなかで〈ああ、こういう感じだな〉っていう世界観ができてくる。例えば“フェスティバル”とかだと、アイリッシュな音楽を奏でるどこかの国の、王宮に勤めている音楽団がいて」

沖山「曲を作りはじめた時に具体的な話であったのが、ドラムとベースは王宮の楽団のエリートたちで、そこにアコーディオン奏者として、街の貧乏な少年が参加することになって」

真夏「最初はすごくいじめられるんですよ。〈おめえみてえな貧乏人、俺たちと演奏する資格はねえんだよ〉って言われたりとか、食事が少年だけ違うとか、そういう具体的ないじめを受けるんだけど、でも、その少年のアコーディオンは本当に素晴らしいんですよ。で、みんなも気付いてるんです。〈あいつのアコーディオンはマジでヤバイ〉って。だけど、彼らはエリートだから貧乏人のことを認められない。そこから次第にお互いの距離が縮まっていって、みんなで素晴らしい演奏ができるようになっていって。〈やっぱお前のアコーディオンは最高だよ、ごめんな〉ってなって、今日は初めてのお披露目の日、っていう曲なんですよ」

――ホントに具体的ですね(笑)。

真夏「それを一生懸命みんなに説明して」

――いつもそういう作り方なんですか?

沖山「そういうのもありますね(笑)。それぞれ聴いてる音楽が違ってたりするので、こういうバンドの音をやってみよう、みたいなことを言っても、あんまり共有できてないことが多くて。だから、そういうよくわかんないストーリーを言ったほうがいい場合はありますね(笑)」

真夏「歩里がキーボードでアコーディオンの音を持ってきた時には、〈気高さ足りなくない?〉〈確かに気高さはないね〉とか。ホントに感覚のキャッチボールでやってます」

――では、歌詞は?

真夏「歌詞とメロディーがいっしょに出てきて、(王宮のイメージは)その0.5秒後ぐらいについてくる感じで。これは自分のことでもあるけど、そのアコーディオン奏者のことでもあって、いろんな要素がバーッて入ってきて、それが一本の道となって出ていくだけなんです。だから自分としてはストーリーとして合点がいってる感じですね」

 

カテゴリ : ニューフェイズ

掲載: 2010年07月28日 18:00

インタヴュー・文/土田真弓