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インタビュー

INTERVIEW(5)――全員ひとりだと浮いちゃう

 

全員ひとりだと浮いちゃう

 

SEBASTIAN X_A1

 

――この、とことん肯定する方向性って、嘘臭くなってしまう危険性もあったりすると思うんですけど、SEBASTIAN Xがそうならないのは、歌のパワーによるものだと思うんですよ。

真夏「私はいわゆる歌の上手い人ではなくて、自分の生命力だけを頼りにして歌を歌おうと思っていて。前作の時は、作品として教養っていう側面も必要なのかな?って思ったから、〈ここ音程外れてるな〉って思ったら歌い直したりもしたんですけど、今回は、そういうことは一切気にせずにやりました。他人からの評価とか音楽論ってテンプレートがあると思うんですけど、そのテンプレートに当てはめたら、私の歌はどちらかというとあんまり良くないと思うんですよ。音楽ってそういう楽しさもあるけど、そうじゃないものもいっぱいあって、私はそっちかなと思って。今回は、評価とかを気にせずに、レコーディングしました」

――テンプレートに当てはまらないにしても、このバンドの音楽を表現するにはジャストなヴォーカルだと思いますよ。

真夏「それはたぶん、メンバーのみんなのおかげですね。自分の生命力だけだと浮いてしまうから。そこに楽器が寄り添ってくれて、音楽になる感じはします」

――ライヴで実際に観た時に特に思いましたけど、ホントに生命力が放出されてますよね。

真夏「そうですか(笑)? なんでかは自分でわかんないですけど(笑)」

沖山「歌は、たぶん5年前と変わってなくて。音楽はいろいろと変わってるけども、まなっちゃんの歌に対する姿勢はブレていないですね。それ以外をやろうと思ってないだけだと思うんですけど。各楽器が自然に歌に添ったものになってきてる、ってとこもあると思います。歌に対する寄り添い方が、各々わかってきたのかな、っていう感じはしますね」

――楽器隊もアゲていかないと、このパワフルな歌が浮いてしまうっていうのはあるかもしれないですね。

沖山「そうですね(笑)。前作までは、ひたすら足し算でやってく部分が多かったんですけど、今回は歌に対して引くこともできるかな、と。徐々にそういうバランスが取れるようになってきたというか」

真夏「曲を作る時にいつも言うのが、上手なやつとか、いい感じのやつだったら、それはスタジオ・ミュージシャンに頼んだほうがいいに決まってる。でも、そうじゃないから。上手じゃなくてもいいし、振り切っちゃっててもいいから、自分だからできることをしてください、って。歌ってすごい目立つから、私の個性がバーッて前に出ちゃうと思うんですけど、やってることは、みんないっしょなんじゃないかな、って思うんですよね。全員ひとりだと浮いちゃう。おんなじぐらいの熱量をぶつけてる感じはしますね」

――確かに。そうして9曲が出来たわけですが、通して聴いてみていかがでした?

真夏「やっぱり、流れができて良かったなと思いますね」

――その流れって?

真夏「なんだろ? バーッって陽が昇って、沈む。で、また陽が昇るまで、みたいな感じ?」

―― 一旦、陽は沈むけど、また明日ね、って?

真夏「そうですね。そういうアルバムになったかな、って思います」

 

カテゴリ : ニューフェイズ

掲載: 2010年07月28日 18:00

インタヴュー・文/土田真弓