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インタビュー

INTERVIEW(3)——沈む船でももろとも行こう

 

沈む船でももろとも行こう

 

——ある意味、いまのbómiの持ってる勢いがタイトルに出たって印象も受けますね。楽曲に触れていくと、1曲目の“KANZEN Wo Ai Nii!!”は、エレクトロ入りのポップなロック・チューンで、付き合う寸前の女の子の気持ちをズバッと出した曲です。

「これは、今回初めて作った曲だったのでいろいろ試したんです。最初は、ほんとに意味のないものを作ろうと思いすぎて、ただおもしろい言葉を並べたんですけど、それだといびつなっちゃうって気付いたんです。歌詞のイメージも、最初は『ルパン三世 カリオストロの城』みたいにしたかったけど、3回くらい変わって、全然違うものになったんです(笑)」

——中国語も入ってるし、かなりおもしろい言葉を散りばめてられてますが。

「音感がいい言葉を入れてったら、中国語がハマったんです。あと、少女時代の“Gee”を聴いたときに衝撃を受けたんです。〈衝撃的 恋ハセヨ〉〈メッチャメッチャ チョアチョア〉とか、この言語感覚すごくおもしろい!と思って、それが強く残ってたんです」

——なんと、少女時代の“Gee”の影響が歌詞に反映されてたとは(笑)。

「いや~、かなり影響ありますよ(笑)」

——あと、ヴォーカルは以前よりも、力強い歌い方になりましたね。

「自然とこうなりましたね。以前はバラード系の曲が多くて、ビブラートをかける歌い方だったんです。で、このトラックに、ちょっとでもビブラートかけて歌うとノリが全然悪くなって。基本、こういう曲はビブラートなしなんだってわかりましたね」

——音に合った自然な変化だったと。“Mr. & Ms. Boring”は切れのいいポップなナンバーです。つまらないこと忘れて踊ろうと歌う、まさにパーティー・チューンですね。

「この曲は、bómiのやる音楽をいちばんわかりやすく体現できた曲じゃないかなと思ってるんです。〈ユルくてカッコいいけどポップ〉っていう音楽をやりたいと思ってたので、それがバランスよくできたなって」

——これも歌詞は、かなり遊んでますね。

「語感だけですね。みんなに〈小龍包ー!〉って歌ってほしくて(笑)。〈なんでそんなこと言ったんだろう〉とか思ってもらえたら楽しいですよね(笑)」

——確かにここまで振り切れてるのはおもしろいですよ。歌ってるbómiさん自身も楽しんじゃってる感じが出てますし。

「もちろん、ここまできたら楽しんだ者勝ちだなって(笑)。あとwtfさんが根っから明るいんですね。私、根が暗いほうなんで、そういうところで助かってるし、それが曲にも反映されてますね」

——“泣きっ面リリー”は、切ないメロディーのギター・ロックで、歌詞は、悲しいことがあった人をそっと守るような思いが感じ取れます。

「歌詞を書いたのが、震災のちょっとあとだったんです。あのとき、すごく無力感を感じたんですよ。しかも、いま、私がやろうとしてる音楽って〈みんながんばろう〉って応援ソングとは真逆だったし。戸惑ったけど、私が曲に込めるなら、ちょっと背中を押す、寄り添えるものがいいのかなって。全体的にやさぐれた感じだけど、聴いて気持ちがちょっとスッとする、半歩くらい進めそうかなって曲を作りたくて、そういう歌詞になりました」

——次の“Voyage”は、ハードなサウンドの上でハイトーンで歌う、もがいてる現実感と前に進んでいきたい思いが入り交じった曲です。

「いつも、1年のテーマを正月に決めるんです。今年は〈信じる〉だったんですね。それを曲にしたいっていうのがきっかけで出来たんです。わかりやすいロックの曲だったので歌詞にも強さが出ましたね。そのほうが、真っ直ぐ届くと思ったんです。でも、ただ信じて進んでいこうっていうよりも、私の場合はひねくれるとこがあるんで(笑)、沈む船でももろとも行こうっていう、自分なりの〈Voyage感〉が出てます。沈んでも泳いででも行くぜっていう。〈パイレーツ・ロック〉っていう映画を観たときに歌詞を書いたんです(笑)。映画のなかで〈船は沈んでもオレはいるぜ〉って人がいて、バカっぽいかもしれないけどそれにグッときちゃったんですよ(笑)」

——まさに、いまのbómiさんの立ち位置、信念みたいなものが出た曲だと。

「そうですね。この音楽をやるって決心したときに腹を括った部分はあって、それを曲にしたいなと思ったので」

——そして、ラストの“Preĝado”は、ドイツ語と英語で歌う、淡々とした浮遊感のあるナンバーです。

「しかもこれ、タイトルがエスペラント語なんです。トラックを聴いて、これはおまじないみたいな曲を作りたいと思ったんです。最初、黒魔術の本を読んで作ろうと思ったんですけど、ちょっと怖くなって(笑)。じゃあ、自分なりのおまじないを、音感で作ることにしようって。歌ってて出てきた言葉がドイツ語と英語で、そのまま歌詞にしたんです。〈愛も恐れも悲しみも、3つ数えたら夜明け前に消える〉っておまじないです。全体的には、私がもともと好きなオルタナ感に近い曲になりましたね」

 

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掲載: 2011年07月06日 17:59

インタヴュー・文/土屋恵介