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インタビュー

PITBULL 『Planet Pit』

 

わっしょい! わっしょい! 夏☆本☆番! わっしょい! わっしょい! 熱☆帯☆夜! でっかい花火を打ち上げろ! 惑星規模で夏を踊らせる祭りのキングが帰ってきたZ!

 

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パエリアを作りたかった

「今作『Planet Pit』の目標はアルバムから10曲のヒットを作ることさ。アルバムに収録されている曲はすべてシングル・ヒットさせる!くらいの気持ちがあるよ」。

そんな大それたヴィジョンをぶち上げるのは、いまやメインストリームの音楽シーンを代表するヒットメイカー、そして客演キングという称号まで手にしている最高のお祭り野郎、ピットブルその人だ。マイアミ出身のキューバ系ラッパーで、地元の名士であるアンクル・ルークことルーサー・キャンベル(2ライヴ・クルー)やリル・ジョンのフックアップを受けて、2004年のシングル“Culo”でデビュー。以降、コンスタントなストリート・ヒットと客演仕事を重ねて着実にシーン内でのステイタスを固め、人気も急上昇していくわけだが、特に『Rebelution』(2009年)でメジャー・デビューを果たして以降の活躍には目覚ましいものがあり、そのスパニッシュを織り交ぜたシーン屈指のパーティー・ロッカーなスタイルでヒット請負人としての絶大なプロップをゲット。いまではアッシャーやジェニファー・ロペス、エンリケ・イグレシアスらのトップスターたちもヒットを求め、こぞってシングル曲にピットブルを起用する現象まで起きちゃってるんだから、彼のヴィジョンもあながち大それたモノではないのかもしれない。その客演人気をピット自身に分析してもらうと……。

「俺にしかできない役割があるからね。俺がいることでジャンル・ミックスが可能になる。例えば、今作に収録されている“Shake Senora”にはフロリダ州タラハシー出身のT・ペインと、ジャマイカの風味を提供してくれるショーン・ポールが参加してるけど、それを繋げられるのが俺のラップなんだ。俺の役目は親善大使だね。世界中からいろんな要素を集めて、いままで聴いたことのないような音に仕上げる橋渡しをしている。曲にはいままで行ったことのある国や街の要素すべてを少しずつ採り入れるようにしてるんだ」。

その言葉通りにさまざまなスタイルがブレンドされている新作『Planet Pit』だが、それはやはりピットの出身地であり、育った街でもあるマイアミという土地柄が強く影響しているようだ。

「子供の頃から親しんできたマイアミの音楽を採り入れてるんだ。このエリアではキューバ、ドミニカ、コロンビアなどカリブ海から移住してきた人々のおかげで、さまざまなダンス色の強いサウンドが主流になっている。今作はそれらに影響を受けたラップ、ビート、フックを織り交ぜて、スパイスたっぷりのスタイリッシュな仕上がりにしたよ。俺はサルサ、メレンゲ、バチャータ、マイアミ・ベースなんかを聴いて育ち、それからヒップホップに入ったからそれらを全部鍋(=アルバム)に入れてみたんだ。スペイン語でパエリアっていうんだけど、そういう作品にしたかったのさ」。

 

音楽は人々をひとつにできる

そんなゴッタ煮の新作からは、ニーヨらをフィーチャーした先行曲“Give Me Everything”がピットのキャリアで初めて全米1位を獲得するという大ヒットを記録。それ以前にカットされていた“Hey Baby(Drop It To The Floor)”の全米TOP10ヒットも含め、目標であるアルバム収録全曲ヒットへ向けて最高の滑り出しとなったが、同曲を手掛けたアフロジャックをはじめ、ポロウ・ダ・ドンにレッドワン、マックス・マーティン、ベニー・ブランコ、Drルークら、ポップ・フィールドで活躍するトップ・プロデューサーたちが作中には名を連ねている。

「今作に参加しているプロデューサーは抜群の〈耳〉を持ったヒットメイカーばかりさ。それぞれが独自のヴァイブスとスタイルを持っているけど、スタジオに入ったら皆ゴールはいっしょ。〈どうやったらビッグ・ヒットを作れるか?〉なんだ。だから俺は、あえて他のプロデューサーの曲を別のプロデューサーに聴かせるんだよ。そうすると〈よし、これに勝るものを作ろうじゃないか!〉ってことになり、それぞれが良きライバルとなって最高の作品が出来るんだ」。

単なるお祭り野郎じゃなく、バリバリに頭の切れる策士の面も窺わせるが、ポップ・フィールドへグッとアプローチした今作はピットのキャラにドンピシャだし、この布陣は大成功と言える。また、ゲスト勢も先に述べたニーヨやT・ペインに加え、エンリケ・イグレシアスやクリス・ブラウン、ケリー・ローランド、ジェイミー・フォックスら、かつてなく豪華な面々がラインナップされており、そこからも現在のピットのイケイケな状況が感じ取れるだろう。国や世界なんて次元すら超えちゃってるアルバム・タイトルも痛快だ。

「(タイトルの意味は)別に俺が世界を支配しているとか言うつもりはないよ。ただ自分の惑星でも作った気分なだけ。たくさんの人の耳に届いているんだよね、自分の楽曲もそうだし、誰かの曲に参加する時も。“I Know You Want Me(Calle Ocho)”(『Rebelution』収録)がブレイクしたときに世界中を見ることができて、世界的なヒットというもののパワーを目の当たりにしたんだ。音楽が人々をひとつにできるってことをね。それでさらに高い目標をめざすことにしたんだよ」。

▼ 『Planet Pit』に参加したアーティストの作品を一部紹介。

左から、ニーヨの2010年作『Libra Scale』(Def Jam)、T・ペインの2008年作『Thr33 Ringz』(Nappy Boy/Konvict/Jive)、ショーン・ポールの2009年作『Imperial Blaze』(VP/Atlantic)、エンリケ・イグレシアスの2010年作『Euphoria』(Universal Republic)、クリス・ブラウンの2011年作『F.A.M.E.』(Jive)、ケリー・ローランドのニュー・アルバム『Here I Am』(Universal Republic)、ジェイミー・フォックスの2010年作『Best Night Of My Life』(J)、マーク・アンソニーの2010年作『Iconos』(Sony Latin)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2011年08月04日 19:04

更新: 2011年08月04日 19:15

ソース: bounce 334号 (2011年7月25日発行)

インタヴュー・文/升本 徹