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インタビュー

ピットブルがキャリアを通じて体現してきたぞめき成分を分析!

 

マイアミ

 

南米やカリブ圏からの移民が多いマイアミで、キューバ系移民の二世として生まれたピットブル。成長期に彼をギンギンに夢中にさせたのは地元に根差していたヒップホップでした。なかでも同地の特徴的なサウンドとされるマイアミ・ベースは、80年代のエレクトロが肥大化して地元の気風に定着したものですが、そのオリジネイターとなるルークにフックアップされる形で、ピットは2001年に音盤デビューを果たしています。数年後にトリック・ダディやリック・ロスらを擁するスリップン・スライドを中心にマイアミのヒップホップ・シーンが盛り上がると、ピットもその代表格として君臨。DJキャレドやトリーナ、フロウ・ライダー、アーバン・ミスティック、ベースの大御所であるDJラズらと共演して地元の絆を強めています。

▼文中に登場した作品を紹介。

左から、アンクル・ルークの2006年作『My Life & Freaky Times』(Luke)、DJキャレドの2008年作『We Global』(Terror Squad/eOne)、トリーナの2008年作『Still Da Baddest』(Slip-N-Slide

 

 

クランク

 

現在活躍する他のマイアミ・ラッパーとピットが少し違うのは、マイアミ・ベースのスロウ&ヘヴィーな発展型と言えるクランクを基盤にして台頭したこと。ルークから引き継ぐ格好でピットの後ろ盾となったのは、そのクランク・サウンドを提唱したリル・ジョンでした。同じくリル・ジョンの仕掛けでブレイクしたイン・ヤン・トゥインズとの共闘も華々しいものでしたが、重要なのはクランクのビートが当時のダンスホール・レゲエやレゲトンのオケと分け隔てなく繋がれるお祭りスタイルだったこと。その輪の中でピットもエレファント・マンやTOK、ダディ・ヤンキー、トニー・タッチ、アダーサらと合体しています。現在の彼のビート対応の柔軟さはここで培われた部分も大きいでしょう。

▼文中に登場した作品を紹介。

左から、イン・ヤン・トゥインズの2005年作『U.S.A.: United State Of Atlanta』(Collipark/TVT)、T.O.Kの2005年作『Unknown Language』(VP)
トニー・タッチの2005年作『The ReggaeTony Album』(EMI Latin)

 

 

ラティーノ

 

本誌の予言通り(?)離婚したジェニファー・ロペスの久々のビッグ・ヒット“On The Floor”をはじめ、エンリケ・イグレシアスの“I Like It”など、ラテン系スターのポップ・クロスオーヴァーに欠かせない存在となっているピットですが、血の絆で団結することの多い彼らだけに、ラテン系アクトとのコラボは国やフィールドを問わず本当に膨大です。シャキーラやサイプレス・ヒルのような各界の大物を筆頭に、メリンダのようなラテン・ポップでもルミディーのようなR&Bでも、同じキューバの血を引くオリシャスでも、ベイビー・バッシュやチンゴ・ブリンといったチカーノ・ラッパーでも身軽に越境して共演。先述したレゲトン勢も、もちろんこっちの側面から捉えることもできますね。新作ではアイアート・モレイラのネタ使いも披露していますが、アンバサダーとして中南米の風味と他のフィールドを繋ぐ役割は今後も増えそうです。

▼文中に登場した作品を紹介。

左から、ジェニファー・ロペスの2011年作『Love?』(Island)、シャキーラの 2010年作『Sale El Sol』(Sony Latin)、サイプレス・ヒルの2010年作『Rise Up』(Priority/Capitol)、ベリンダの2010年作『Carpe Diem』(Capitol Latin)

 

 

EDM

 

ニコラ・ファサーノvs.パット・リッチの“75, Brazil Street”とナイトクローラーズのハウス古典“Push The Feeling On”をそれぞれベタ使いした『Rebelution』からの2大ヒットは衝撃的でしたが、もともとマイアミはハウスなどのダンス・ミュージックも盛んなわけで、ピットがエレクトロ・ホップなどの時流に素早く対応できたことも不思議じゃないでしょう。そんなわけでピットのスタイルはいわゆるエレクトロとも、その影響下にあるアーバン・ポップとも相性抜群。こうしてみるとピットの凄さは、本来なら縦横無尽にリンクしているはずの音楽と音楽を誰にでもルートが見える形で繋いでみせていることにあるのかもしれません。

▼文中に登場した作品を紹介。

左から、クルッカーズの2010年作『Tons Of Friends』(Southern Fried)、アッシャーの2010年作『Versus』(LaFace/Jive)、オノレベルの2010年作『Club Scene』(Ultra/avex trax)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2011年08月04日 19:04

更新: 2011年08月04日 19:15

ソース: bounce 334号 (2011年7月25日発行)

文/出嶌孝次

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