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インタビュー

us 『QUARTZ』



ノイズ混じりのタイトなグルーヴと、ポップなメロディー──エレクトロニカを通過して磨かれた、宝石のような初作が登場!



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エレクトロニカというフィールドで冒険に乗り出した4人組、us。これまでロック・バンドをやっていた大崎翔太(ヴォーカル)と及川創介(キーボード)が電子音楽に目覚め、土屋夏海(キーボード)とタダヒロヤス(ギター/シンセサイザー)を加えてusをスタート。最初はビョークやレディオヘッド、マッシヴ・アタックなどのサウンドをイメージして活動を始めたが、ライヴを重ねるうちに少しずつ自分たちの進むべき道が見えてきた。

「エレクトロニカだからノイズが入ってなきゃとか、そういうイメージに執着しないでいいんじゃないかって思うようになってきたんですよね。別にカッコ良ければ何やったっていいんじゃないかって。例えばライヴをやってみると、やっぱりグルーヴが立ってるほうがいい。だから、もっと肉体的なものを伝えられるようなサウンドにしてもいいんじゃないかと」(タダ)。

「そういう意味で、だんだん自由になってきた。マニアックさを持ちながらどれくらいポップにするか、どうやってusらしい音にするかを考えるようになったのが、アルバムを作っている頃だったんです」(大崎)。

そして、完成したのがファースト・アルバム『QUARTZ』だ。緻密に重ねられたエレクトロニックなサウンドから浮かび上がるポップなメロディー。ノイズ混じりのタイトなグルーヴが曲に躍動感を与えている。今回、ソングライティング担当の及川がポイントに置いたのは、usらしいポップセンスだった。

「コードじゃなく、メロディーから曲を作ることが増えましたね。どこか1か所が——特にメロディーがポップだったら、あとはノイズまみれでもポップな音楽に聴こえる。だから子供でも覚えるぐらいのメロディーをいかにマニアックに聴かせるか、そういうことを意識していました」(及川)。

及川が言うには、彼が作ったデモ音源を「絶対、俺が入れないようなエグい音を入れてカッコ良くする」のがタダの役割だ。本人いわく「usにいながらusを外から見ているような」視線が、サウンドに多面性を持ち込んでいる。

「アルバムの曲は全部キャラ立ちしてるんで、リズムと歌、この2本の柱を軸にして、必要な音とそうじゃない音をシビアにジャッジしていきました。普段は〈音楽は娯楽だ〉と思って歌詞とか気にしないほうなんですけど、usの場合は翔太君の歌詞に触発されることも多くて。歌詞の世界観と音のカラーをミックスさせていくような感じですね」(タダ)。

今回のレコーディングを通じて、usらしい音を確立することができたという4人。なかでも、最初に確かな手応えを感じさせたのが“r2”だ。

「“r2”が出来てから曲のスタイルがかなり変わって、良い意味で固定されたんです。曲が似てきたとかじゃなくて、一本芯が通ったっていうか」(土屋)。

「クライマックスまではノイズがメインな感じなんですけど、最後に出てくるサビがもうほんとに良いメロディーで。自分たちの二面性、マニアックな音作りとポップな部分をしっかり出すことができた。で、この曲を踏まえて次に出来た曲“marble”が、1回目のusの完成形かなって気がしますね。全編ダークだけどポップな掴みがある。初めてメンバー全員が納得できた曲です」(大崎)。

試行錯誤の果てに生まれたオリジナリティー。エレクトロニカをやるのではなく、自分たちの音をプレイする。その確信が、usを次のステージへと導いていくに違いない。

「アルバム・タイトルの『QUARTZ』は〈宝石(水晶)〉のことなんですけど、〈4枚綴りの〉っていう意味もあって。自分たち4人のなかから選りすぐって抽出したもの、それがこの7曲なんです」(大崎)。



▼文中に登場したアーティストの作品を紹介。

左から、レディオヘッドの2000年作『Kid A』(Parlophone)、ビョークの2001年作『Vespertine』(One Little Indian/Polydor)、マッシヴ・アタックの2003年作『100th Window』(Virgin)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2012年03月21日 00:00

更新: 2012年03月21日 00:00

ソース: bounce 342号(2012年3月25日発行)

インタヴュー・文/村尾泰郎