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インタビュー

森田修平(映画SHORT PEACE 『九十九』監督)/2

こうして、もちろん、森田にとっても大友克洋はリスペクトの対象だったわけだが、前述のCMや本作では、一緒に仕事をする相手となった。偉大な先輩の実像は、森田の目にどんな風に映っているのだろう?

「すごく新しいものが好きで、つねに新しいものを作ろうとしている。逆にいうと、自分がこれまでにやってきたものや、何となく想像できるようなことは避けるタイプというか……。CMのテイストを作っていくときに、アニメはヤダ、とおっしゃる(笑)。僕としては、えっ、アニメを作るんですけど……と思いました(笑)。CG的なことをいろいろやってくれ、と言われましたが、分かりやすくCGっぽい、というのが、むしろ僕はイヤだったんです。作画は『スチームボーイ』でやりきったから、何か上をいきたいんだ、ということだったと思います。でも僕は逆で、CG作業をする人間が作画というものを知らないのは問題だと思えたし、やっぱりアニメの基本となるテイストは外したくなかったんです」

『九十九(つくも)』
脚本・監督:森田修平
ストーリー原案・コンセプトデザイン:岸啓介

大友と森田のあいだでの興味深いやり取りが、“FREEDOM-PROJECT”の現場で展開されたことがうかがえる。すでに作画はやり尽くしたとの思いから、CGなどに新たな活路を見出そうとする大友に対し、逆にCGからアニメに入った森田は、日本のお家芸ともいうべき作画の伝統から何かを吸収し、先へ進もうとする……。

「アニメの絵って、情報を削っていく絵なんですね。お客さんにとって見やすいし、お話に没頭しやすい。だから、CGありきで作品を作るのは自分としては好きじゃなくて、まず作画というものがあって、それを学んだうえで次のステージへ行きたいんです。たとえば、面白い演出であったり。モーションが下手で、歩いているように見えない、そういうCGのイメージにとどまりたくなかったので、僕は作画から学びたかった。2002年くらいに、CGをやる人たちのなかで、ピクサーを目指す人が多かった。でも、僕としては、ピクサーはもう10年も先に始めてるのに対して、日本には作画のアニメという宝物があるので、そこを通らずしてどうするんだよ……という気持ちがありました。アニメは情報を削除していく文化で、浮世絵にも通じるかもしれないですが、そういうのが日本は得意だと思います。逆にアメリカの映画は、情報を足すというか過剰にしていく。宮崎さんのアニメなどは、本当にちょっとしたことでも、奥が深いんですよね。さらに世界観も作れて、次は面白いストーリーとか……いくらでも広がりがもてる。そうした部分を通らずに、いきなりCGというのが好きじゃなったんです」

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カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2013年07月18日 12:08

ソース: intoxicate vol.104(2013年6月20日発行号)

interview&text : 北小路隆志