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インタビュー

INTERVIEW with 石井秀仁(1)——自分の気持ちをどうにかできるのは自分だけ



cali≠gari



――制作はだいぶ難航したようですね。長い期間に渡って、というのもあるかと思いますが。

「そうですね。ツアーとかもあって、とびとびですからね」

――そのラストスパート期間はもう〈本当に出るのか!?〉と。

「うん、でもそういうのけっこう慣れてますから(笑)」

――(笑)今回は、全体的なお話は最後に伺うとして、まず1曲ずつお訊きしようかと思うんですが。

「でも、あれですよ。1曲1曲に明確な何かがあるとは限らないですよ。俺もわからないですけどね、訊かれてみないと(笑)」



吐イテ棄テロ



――はい(笑)。まずは“吐イテ棄テロ”ですが、確か以前、楽曲はアルバムのどのあたりに入るものかを大体想定して書いている、とおっしゃってたと思うんですね。



「そうですね。もちろん最初に曲を作る時にそういうことは全然考えないですけど、2、3曲出来たあとっていうことですかね。その〈出来る〉っていうのは、バンドとしてのレコーディングが完成するっていうことじゃなくて自分が作ってるデモが、っていうことですけどね。まあ最近の傾向として俺の曲っていうのはアルバムの前半のほうに、っていうのが多いんですけど、なんとなく2、3曲作った段階で〈絶対的に1曲目の雰囲気がある曲〉がなかったから、特に意識して作ったのは1曲目ぐらいですかね」

――“吐イテ棄テロ”は、デモの制作の時点からアルバムのオープニング曲にしようと。

「オープニングというか……まあでも前半、かな。cali≠gariは、曲を作る人間が自分以外にもいるじゃないですか。青さんもそうだし、研次郎くんなんかも書いてくるので、導入の曲があったほうがひとつの基準になるでしょ? だから俺のなかで〈1曲目だったらこういう感じかな?〉っていうのを先に作っといた、っていうのではあるんですけどね」

――石井さんがイメージしていたオープニングってどのようなものですか?

「今回は結果的にそうなってますけど、例えばね、数字で言ったら1曲目が70で2曲目が100みたいなのが俺はすごく格好良いと思うんですね。テンポ感もそうだけど、1曲目にすんげえ速い曲がくるともう2曲目で落ちちゃうから、スピード感っていう部分では1曲目からグイッとくるんだけど、1曲目が終わったと同時に2曲目でもっとすごいやつが畳み掛けてくるみたいな感じの導入にしたいっていうのはあったんですよね」

――その畳み掛けるほうの2曲目“JAP ザ リパー”は曲が石井さんで、詞が青さん。この組み合わせは初めてですね。

「そうですね」

――どちらが曲を書くかで闘ったのはこの曲でしょうか。

「そんなの闘わないですよ。俺が詞を選ぶことはないですから。曲だったら作れるけど詞は無理だと。あとほら、その形のほうが絶対おもしろいですよね。まあcali≠gari的にはあんまりビックリするようなことではないかもしれないけど、普通のバンドで考えたら逆転してるわけじゃないですか。ヴォーカリストが曲作ってギタリストが歌詞書いて、みたいな。しかもどちらかが曲でどちらかが詞とか、そういうことやったことないのにいきなり逆転してる、っていう。で、別に大げさな曲でもなく、ね(笑)」

――ファストコアとポジティヴ・パンクが合体したような、とにかく突っ走る曲で。

「うん」

――1曲目と2曲目はある意味で連作のようなものですよね?

「まあ結果的にはそうかもしれないですね。なんかね、1曲だけで掴みって……掴みって言い方もあれだけど、なんかね、もうそんなに誤魔化されないですよね」

――誤魔化す、って(笑)。

「もちろん11曲あれば11曲重要ですけど、気持ちのいい曲の並びとかあるじゃないですか。そういうのって、頭の曲だけとかじゃやっぱりね、もうそんな歳じゃないですから騙されないですよね。長く音楽を聴いてるとね。3曲目ぐらいまでの一連の流れがちゃんとあることによって、気付くともう最後まで聴いてましたね、みたいになる」

――冒頭のシタールのようなシンセが印象的な“吐イテ棄テロ”は、掴みどころがないぶん緊張感があるといいますか……どう展開していくのかさっぱり予想できない楽曲で。

「そうなんですよね。イントロ1、イントロ2、あと、あれをAメロと言うならAメロなのかな。そこまでの展開がもうどうなっちゃうの?みたいな感じはまあ確かにありますよね」

――サビは一転してすごくキャッチーで疾走感があって、そのまま次の“JAP ザ リパー”へ続いていくわけですが、この“吐イテ棄テロ”の歌詞は、石井さんにしてはわかりやすいといいますか。

「最後のほうですよね」

――はい。解釈しやすい歌詞かな、と。それはあえてですか?

「常に狙ってはいないから、あえて、っていうのもないんですけど、まあ文章として解釈はしやすいですよね(笑)。だいぶ優しいは優しい」

――となると、こういう歌詞になったのは、メロディーにこの言葉がいちばんしっくりきたから、ということですか?

「うーん……必ずしもそうではないと思いますけどね。何かを言いたかったんじゃないですかね(笑)」

――例えばですけど、いまの……震災後の日本ですよね。放射能の問題もありますし、普通に暮らしていても何がしかに蝕まれる状況ですとか……そんなことに対する憤りにも取れると思うんですが。

「うん。まあ、そんなことですよね。そういうことを直接的に歌ってるんではないけど、結局なんか……どうでもよくね?みたいな(笑)」

――(笑)何がですか?

「何事においてもですけど、いろいろ悩んでね、答えを絞り出そうとしたとして、果たしてそこに正解はあるのか?って。何かに対して不満を抱いてみてもね、最終的にどうやったらそれを吹っ切れんだろうな、って考えると、自分が〈もう、どうでもいいよ〉って思うしかなかったりするじゃないですか。簡単に言ってみれば、選挙行ってみたりとか、そんなことじゃどうにもなんないっていうか……これ、俺が言うようなことじゃない話になってきてますよ」

――いやいやそこを話してみませんか。

「なんだろうね? 諦めるとか自暴自棄とかっていうのではないけどね。最終的に自分が〈どうでもいいや〉って思うことによって納得できる……あの、別にたいしたこと言わないですよ(笑)」

――なんなんですか(笑)。先ほどの選挙の例で言えば、一票の重みはあるんでしょうけれど、投じた結果に対して感じるやるせなさがあったりとか。

「そうです、そうです。結局のところね、自分の気持ちをどうにかできるのって自分だけですから。だからここで自分が何かやってみたところで、それって、結局……あんまりいい話じゃないですよ、これ(笑)。だから、そういうことに対する歯痒さみたいなものですよね。〈なんなんだ、これは〉みたいな。米米CLUBにも“なんですか これは”っていう歌がありますよね(笑)? (突然歌い出す)〈なんですかこれはなんですかこれは/わ・か・ら・な・い~♪〉……そんなもんですよ(笑)」

――えーと……(苦笑)。

「いきなり米米CLUBの話になってしまったけど、俺、あの曲を小学生の頃、初めて聴いた時にものすごい衝撃を受けて。〈なんですかこれは/わからないな〉で曲が出来るんだ、ってね(笑)」

――その後の石井さんに多大なる影響があるんですか?

「なんかね、うん……そうですよ(笑)」

――あの、要約しますと個人の力の及ばないことに対する歯痒さ、ということでしょうか。

「まあ、歌詞でもそんなこと言ってますもんね。そうなんですよ。例えば政治家の支持率とかが、半年、1年でコロコロ変わったりとかするじゃないですか。お前さ、支持するって言った人間を半年、1年でさあ、って……そういうこともね、日本人がどうこうじゃなくて、人間ってこういうもんだよなあって思ったり。TVのワイドショーとか国会とかって、自分たちが小学校の頃にクラスのなかで行われてたことをそのままジジイ、ババアが難しい言葉使ってやってるだけで、この人たちは……この人たちって自分も含めてですけど、人間ってのは結局成長しねえんだな、みたいなことを思ったことがあったんですよね」

――まるで学級会じゃないか、と。

「そうそうそう。だけど学級会のほうがもっとちゃんとしてるっていうか。そんなことを思ってた時に書いたんでしょうね」

――人はブレるものだと。それを前提として、物事は取りようとか思いようではないかと。

「そうですよね。まあブレることっていうのは、格好良い、格好悪いっていう言い方もおかしいですけど、全然格好悪いことじゃないと思うんですね。あたりまえでしょ? ただ、なんでもっとごくあたりまえにブレないんですか?って思うわけですよ。なんか、ブレてないふうに装うでしょ? それが格好悪ぃ~、みたいなね。例えば国会でも記憶にないとか、聞いてない、言ってない、とかね。中継もさせなかったりとか。全部そういう話になってるけど(笑)、ええ」

――そういうことを書いていらっしゃる?

「そのこと自体を書いているわけではないですけどね、そういう憤りみたいなのをね、うん」

カテゴリ : .com FLASH!

掲載: 2012年01月11日 18:01

更新: 2012年01月11日 18:01

インタヴュー・文/土田真弓

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