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bloodthirsty butchers

連載
360°
公開
2010/03/20   17:00
更新
2010/03/20   17:06
ソース
bounce 319号 (2010年3月25日発行)
テキスト
インタヴュー・文/久保田泰平

 

bloodthirsty butchersの現在・過去、その素敵すぎる佇まいに触って!

 

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〈bloodthirsty butchersは常に革新的だ〉──これは本誌2001年9月号でインタヴュアーのフミヤマウチ氏が記した最初の1行だが、この言葉にいまだ疑いはない。あれから9年近くも、もっと言えばCDデビューから20年も経つというのに、だ。吉村秀樹(ヴォーカル/ギター)、射守矢雄(ベース)、小松正宏(ド ラムス)、田渕ひさ子(ギター)──4人が鳴らす音、それ以外に何もない、何も足されない彼らの音は、それでいていつも新鮮で、そこには根拠立てて説明できない何かがあり、いつも胸を熱くさせてくれる。熟れた職人技、などではない。例えるならば、見えないゴールに向かってひたすら走り続けるランナーのような〈ひたむき感〉や、諦めというものを知らない〈野心〉が、bloodthirsty butchersの音楽にはある……と思っていたら、ニュー・アルバム『NO ALBUM 無題』のジャケットがまさかのシンクロニシティー。〈ランナー〉というタイトルのこの画は、北海道出身の画家である深井克美(78年没)が死の直前まで手掛けていた未完の作品だそうだ。

「ゴールが見えない、っていうのは確かですね。テーマを設けて作った作品もあるんだろうけども、自分のなかではいつも〈無題〉ですから、延々と。今回のアルバムではそれをそのまんまタイトルにしたわけなんだけど、長くかかったせいもあって、作業していくなか で何がなんだか訳がわからなくなってね。こんなのアルバムじゃねえ!とかひとりで怒り出したりとか(笑)。なんか悶々としてたな。結局、それがアルバムのエネルギーにはなるんだけど、そこに至るまでに……まあ、切なかったなあ。なんかねえ、バンドでやってるんだけど、妙に俺に対するプレッシャーとか比重が大きくなってたというか……バンドが上手く絡まなかったりしてね。録音はしてるんだけど、歌が乗ってかないっていうか、詞が書けないっていうか、オレも甘えてる部分はあったんだけど、バンドの音の一歩先がなかなか見えてこない。結局、追い込んで追い込んで、歌って歌って、ようやく見えた。まあ、完成したからいいけど、今回は相当追い込まれたっていうこともあって、出来上がったときに〈二度とこんなアルバム作りたくない!〉って、また怒ってた(笑)。でもまあ、そういうやりとりもおもしろい。このバンドでやってるから体験できることなんだろうし」(吉村秀樹:以下同)。

〈二度とこんなアルバム作りたくない!〉というのは、いかに吉村が『NO ALBUM 無題』に全身全霊を注いで、bloodthirsty butchersというバンドに情熱を捧げたかの表れでもあろう。端から見れば険悪そうにも見える、このバンドだからこその取っ組み合い=コミュニケーション・スタイルを取りながら、彼らはまた、熱い血の通った〈イイ歌、イイ演奏〉を聴かせてくれている。そんなbloodthirsty butchersにとって、新しい作品を生み出すというのはどういう意味を持つ行為なんだろうか。

「ブッチャーズの持つ音の佇まいに触ってる感じ、それが好きで新しい作品を作り続けてる。アルバム自体はいつも闇雲に作ってて、気持ち的には〈次なくてもいいや〉って思って毎回やってるし、いつも不安でいっぱいで、何を作ってるんだろう?って悶絶することも あるんだけど、何なのこの力?みたいな不思議感がたまんなかったりしてね。だいたい、自分でも説明付けらんないバンドだから、ブッチャーズは(笑)」。

bloodthirsty butchersの持つ音の佇まい──それに触れたときの歓びや興奮は、リスナーとて同じ。『NO ALBUM 無題』に身を委ねているいま、僕は幸せです。

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