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bloodthirsty butchers

田渕ひさ子の加入で変革したブッチャーズ・サウンド、そしてナウ

連載
360°
公開
2010/03/20   17:00
更新
2010/03/20   17:06
ソース
bounce 319号 (2010年3月25日発行)
テキスト
文/岡村詩野

 

長らくトリオ編成で活動していたブッチャーズが第二のギタリストを迎えて4人組となったのは2003年初頭のこと。最初はゲスト・ギタリストとして参加していた田渕ひさ子がそのまま正式メンバーとして迎えられることになった。前年11月にナンバーガールが解散する前から椎名林檎の作品に参加するなど、ギタリストとしての腕、センスが高く評価されていた田渕の加入は、その後のブッチャーズの音楽に大きな変革をもたらすことになる。

99年にトリビュート・アルバムが作られたように、ブッチャーズは若いオルタナ世代からの圧倒的な支持を受け、ちょっとした神格的存在になっていた。だが、その一方で、バンドとして新たな展開を探しあぐねているのが何となく伝わってきていたのも事実。そこで加わったのが田渕だった。鋭利でエッジーなトーンが魅力の彼女がもう一人のギタリストとして加わったことで、演奏には重厚感が生まれ、歌とメロディーへ大きく比重を置くような曲も多数生まれた。結果、田渕加入後初となるオリジナル・アルバム『birdy』には、開拓者としての爪痕を残しながらも、歌という視点からより広げようとする思惑が自然に刻まれることに。実際、吉村秀樹のヴォーカルには大らかさが備わり、言葉とメロディーでしっかり伝えていくことを謳歌しているようだった。それは、もはや何にも縛られない、だが何でもいいという無責任な状態では決してない〈大人の反逆者〉たる佇まい。プラス/マイナス、曽我部恵一、少年ナイフなど2000年代後半に彼らが共演した顔ぶれも、ブッチャーズというバンドの裾野の広がりを教えてくれていた。

そして、アルバム『NO ALBUM 無題』を発表。タイトルを与えない厳しい姿勢は、一見、『kocorono』から“1月”を奪い取ったあの頃の彼らを思い出させるが、どんな冠がそこに付こうが〈ここにいるだけ〉とでもいう柔軟性の表れのようでもある。そう、ここにいる。いまのブッチャーズはドンと構えてここにいるのみだ。

 

▼bloodthirsty butchersの作品を紹介。

左から、2003年のライヴ音源集『green on red』、2004年作『birdy』、2005年作『banging the drum』(すべてコロムビア)、2007年作『ギタリストを殺さないで』(391tone)