日経日曜版「名作コンシェルジュ」に紹介!シューベルトのハンス・ツェンダー編「冬の旅」
作曲家、指揮者のツェンダー(1936~2019)が1993年に創造的編曲したシューベルトの「冬の旅」。1994年にテノールのブロホヴィッツとツェンダー自身の指揮で録音されたCDは当時大きな驚きをもって迎えられましたが、ツェンダーの死により25年ぶりに復活。この名盤が2020年3月8日(日)の日本経済新聞日曜版の鈴木淳史氏による名物コラム「名作コンシェルジュ」に紹介されました。ここでは、その掲載盤とツェンダーの生涯と芸術についてご紹介いたします。
鈴木氏は、ツェンダーのシューベルト作品の“創造的編曲”について、200年前の音楽(冬の旅)に当時の人々が受けたであろう感覚(社会から孤立した疎外感)を再現しようとしたものと解説。その編曲の内容は「当然、ピアノ・パートを小編成オーケストラのためにアレンジしただけではない。原曲の一部分を拡張したり、打楽器を含む様々な楽器をおもいもよらぬ方法で組み合わせ、ほとんどヘンタイといっていい音響を作り出す」と説明します。結論として「ともかく、主人公の内面をこれでもかというくらいにえぐり出す。(略)そのあまりにも即物的なアプローチは、文学的な解釈を行う隙を与えず、リアルな感覚を聴き手にダイレクトに体験させるのだから。ブロホヴィッツとアアンサンブル・モデルンの演奏も芸達者にして、完璧。」と評しています。
(タワーレコード 商品本部 板倉重雄)
2019年10月22日、ドイツの作曲家、指揮者のハンス・ツェンダー氏が亡くなりました。現代作曲家としてオクターブを72分割する微分音や、楽器の特殊奏法、ノイズを駆使して斬新な響きを創造する一方、ベートーヴェンの「ディアベリ変奏曲」、シューベルトの「冬の旅」、シューマンの「幻想曲」など過去の偉大な作品を単なる「編曲」を超えて「再創造」する新ジャンルを生み出しました。指揮者としてはバッハ、モーツァルトからユン・イサン、リームまで驚くほど幅広いレパートリーをもち、精巧極まりない演奏で作品の本質を浮かび上がらせました。
また1972年のミュンヘン・フィルの指揮者としての初来日以降、日本の伝統文化に深い興味と愛着を示し、「無字の経」(1975)、一休宗純を題材とした「風輪の経」(1989)、「Nanzen no kyo - Canto VII ~四部合唱と器楽アンサンブルのための」(1992)、「Issei no kyo ~ソプラノとオーケストラのための」(2009)、読響創立50周年記念委嘱作品の「般若心經」(2012)などを発表しました。
ここでは、彼が残した作品や指揮者としての録音から、その偉大な業績を振り返ります。(タワーレコード 商品本部 板倉重雄)
シューベルト「冬の旅」の再創造
新進テノール ユリアン・プレガルディエンによる2016年録音
Alpha Classics YouTubeページより
ツェンダー: シューベルトの「冬の旅」再創造
ユリアン・プレガルディエン(T)
ライマー指揮ドイツ放送フィルハーモニー
シューベルトの合唱曲の再創造
Provided to YouTube by NAXOS of America
ツェンダー:シューベルトの合唱曲~詩篇23番D.706「神は私の牧者である」
ノット指揮バンベルク交響楽団、同合唱団
一休宗純のテキストを題材とした作品
Provided to YouTube by FINETUNES
ツェンダー:Issei no kyo ~ソプラノとオーケストラのための(2009)
マクファデン(S)カリツケ指揮ケルンWDR交響楽団
※室町時代の禅僧、一休宗純に題材を求めた声楽作品
モーツァルトを振るツェンダー
Provided to YouTube by Universal Music Group
モーツァルト:ピアノ協奏曲第25番~第1楽章
ブレンデル(p)ツェンダー指揮
SWRバーデン=バーデン & フライブルク交響楽団
ツェンダーが指揮したクラシック作品は、かつてGlor ClassicsやCPOから多くのCDが発売されましたが、現在ほとんど手に入らなくなっているのは残念です。復活を期待したいと思います。(タワーレコード)
尹 伊桑(ユン・イサン)の作品を振る
Provided to YouTube by Believe SAS
尹伊桑:ムアーク(オーケストラのための幻想的舞曲)(1978)
ツェンダー指揮ザールブリュッケン放送so
カテゴリ : Classical
掲載: 2020年03月09日 00:00