往年の名ヴァイオリニスト！マックス・ロスタル『20世紀ヴァイオリン・ソナタ集』（2枚組）

同時代の音楽の普及に力を注いだドイツのヴァイオリニストのArgo＆DG録音集
マックス・ロスタル～20世紀ヴァイオリン・ソナタ集

ナチスから逃れ、1934年にロンドンに移住したドイツのヴァイオリニスト、マックス・ロスタルはこのイギリスの都市の音楽界の常連となり、イギリス音楽の素晴らしい演奏者となりました。リサイタルのパートナー、コリン・ホースリーとのエルガー、ディーリアス、ウォルトンのソナタの録音は、1954年の秋にArgoのスタジオで行われました。ロスタルの初期のArgo録音、ブゾーニのヴァイオリン・ソナタ第2番はずっと過小評価され誤解されていたこの作曲家の評価を変えた録音として認められました。その時のパートナー、ノエル・ミュートン=ウッドはオーストラリアのピアニストで、1953年早すぎる死を迎える前のこれが最後の録音でした。そしてこれらの録音に組み合わせたのが1958年10月に作られたドイツ・グラモフォンのアルバムです。ロスタルはモニカ・アースとともにラヴェルと、アースの夫であるマルセル・ミハロヴィチのソナタを演奏しています。ドイツ・グラモフォンの初期のステレオ・サウンドはその完璧なテクニックを生き生きととらえています。CD2枚組。
(ユニバーサルミュージック/IMS)

ラヴェル：ヴァイオリン・ソナタ～第2楽章ブルース（当CDと同一音源）
Provided to YouTube by Universal Music Group

収録予定
《CD 1》1-3) エルガー：ヴァイオリン・ソナタホ短調Op.82、4-5) ウォルトン：ヴァイオリン・ソナタ、6-8) マルセル・ミハロヴィチ：ヴァイオリン・ソナタ第2番Op.45
《CD 2》1-3) ラヴェル：ヴァイオリン・ソナタ ト長調、4-6) ディーリアス：ヴァイオリン・ソナタ第2番、7-9) ブゾーニ：ヴァイオリン・ソナタ第2番ホ短調Op.36a

DECCA初CD化

【演奏】マックス・ロスタル（ヴァイオリン）、コリン・ホースリー（CD 1: 1-5, CD 2: 4-6）、モニク・アース（CD 1: 6-8, CD 2: 1-3）、ノエル・ミュートン=ウッド（CD 2: 7-9）（ピアノ）
【録音】1954年9月（CD 1: 1-5, CD 2: 4-6）、1953年（CD 2: 7-9）、ロンドン、1958年10月、ハノーファー（CD 1: 6-8, CD 2: 1-3）

知られざる名手マックス・ロスタルについて
日本ではあまりレコード、CDが出なかったため知られざる存在となっているマックス・ロスタル（1905～1991）は、ヨーロッパ楽壇で演奏家、名教師として重きをなしたヴァイオリニストでした。ウィーンでアルノルト・ロゼ、ベルリンではカール・フレッシュに就いて学びました。 1927年にオスロ・フィルハーモニー管弦楽団のコンサートマスターになり、1928年からはベルリン音楽アカデミーのカール・フレッシュのアシスタントとなり、2年後には教授となりました。ロスタルはナチス政権の誕生のためロンドンに移住し、1944年から1958年の間、演奏活動を行いつつ教育者として働きました。戦後はベルンとケルンで1982年まで教鞭を執りました。

主な門下生
ノルベルト・ブレイニン（1923～2005）アマデウス弦楽四重奏団のリーダー。
イフラ・ニーマン（1923～2003）レバノン出身。木野雅之、清水高師の師。
イゴール・オジム（1931～）スロヴェニア出身。植村理葉、岡崎慶輔の師。
エディト・パイネマン（1937～）独マインツ出身。ARDミュンヘン音楽コンクール優勝。
ウルフ・ヘルシャー（1942～）独キッツィンゲン出身。カールスルー音楽大学教授。
トーマス・ツェートマイヤー（1961～）ザルツブルク出身。国際的ソリストとして活躍中。

この2枚組は彼の1950年代の名盤を集めたもので、オリジナルLPは何れも入手困難を極め、オリジナル音源からのCD化が長く待たれていたものでした。
今回は20世紀作品の復刻だけですが、英デッカにはベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ録音も多く残しています（第2、4、5、7、8、9番）。彼は『ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ : 演奏への指針』(守岡輝, 山本淳共訳, 音楽之友社)の著したほど造詣が深く、今後のベートーヴェン録音のCD化も期待したいと思います。
(タワーレコード 商品本部 板倉重雄）

【参考音源】ベートーヴェン：クロイツェル・ソナタ～第1楽章
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