インタビュー

ナンバーガール(2)

よりもっと、より、あえて

 2001年、ナンバーガールとしての新録は、前述のサントラ参加だけだったが、向井秀徳は、ナンバーガール外でいくつかのコラボレーションをおこなった。そういったものが、今作の<新譜感>になんらかの影響を及ぼしているのだろうか?

そうかも知れませんねえ。とくにパニックスマイルとやったやつは……“猫町音頭”っていうんですけど、わけわからない曲ですよ、マジで。すさまじい変拍子で、どうやって節をとっていいのかわからんで、どうやって歌詞を書いて、歌をのっけていいのかわからんかったです、最初」。

その作業を糧に作られたのが、まずは先行シングル“NUM-AMI-DABUTZ”(“猫町音頭”の歌詞も引用されている)。そこではラップともお経ともつかない、向井のフリーキーな歌(?)が繰り広げられている。

「歌入れんとき、歌詞が出来て、その歌詞をムリヤリ曲にのっけるためにメロディーが、譜割りができていくわけですけど、それはいままでより結構フリーにやりましたね。……歌入れしてるときは毎回思うけど、やっぱいたたまれぬ気分になる(笑)」。

向井のナンバーガール外作業といえば、キュートな女性シンガー、ha`lに楽曲を提供したという、異色なものもあった。

「そうですねえ、あれはイイ感じになったと思いますよ。で、そこで54-71とやりましたけども、54-71の影響はすごいデカいですねえ。やはり、リズムの面での……リズムを、やはりこう……なんちゅうんですかねえ、<ビート感>っていうんですかねえ、すごいシビアにしてるというか、姿勢っちゅうかね。そういうものを54-71の人たちと出会って再確認したっちゅうか、影響はすごく大きいですね」。

“NUM-AMI-DABUTZ”における向井のフリーキーな唱法も特徴的だが、同曲ならびに『NUM-HEAVYMETALLIC』が醸し出す<新譜感>、その中枢にあるのは、深化した<リズム&ビート>である。54-71からのインスパイアほか、『SAPPUKEI』以降のインタヴューでもTHA BLUE HERBやギャング・オブ・フォーの名前が挙がるなど、リズム&ビートへのさらなる興味を露わにしてきた向井。今作のおけるリズム&ビートは、パターンが広がったというよりも、(アルバム・タイトルから伝わるイメージを用いれば)より<強固>なものになったとでも言おうか。

「それはトライをしましたからね、曲作りの段階で。よりもっと、より、あえて。いろんな試行錯誤もそうやし、自分のなかでどういった感じがいちばんガッツリくるかっていうのを出す作業はしましたね」。

さて、『NUM-HEAVYMETALLIC』は、向井の得た糧を滋養にし、向井がこれまで以上に作品を支配しているような印象も感じるかも知れないが、そういうわけじゃない。「よりハッキリした部分が多くなってきているっていうのはありますねえ」と、自身の世界観を深化させてたりもするのだが、これまで以上にメンバーそれぞれの顔が浮かび上がるもの――音だ。

「これはまあハッキリ言えましょうが、曲作ってる段階でも、まあ、僕が全部やりますわねえ大体、詞も曲も。で、構成の部分とかもやりますけども、基本的にその<場>に自分がインスパイアされる形になっていきますからね、他のメンバーに。これだけやってきてますから、他のメンバーの音楽的なセンスとか、ビート感もタイム感も全部ひっくるめてわかるんですよね。わかるし、わかるからこそ、それをもってして、なんかこう、自分のイメージがハッキリしてくるっちゅうか……できるんですよね」。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2002年04月25日 12:00

更新: 2003年03月07日 19:16

ソース: 『bounce』 231号(2002/4/25)

文/久保田泰平