ナンバーガール(3)
とりあえず盛り上がっとけっていう感じ
4人の力量とコンビネーションが
「もう、なんかよくわからんが、とりあえず盛り上がっとけっていう感じは、さらにあるから。これは跳べる曲、跳べない曲って、そういう感覚で音楽を聴いてるやつらとかもいるけども、<これちょっとオレ的には違うから、跳ぶのやめとこう>みたいな、そう思ってても今回は<わからんけど、とりあえず盛り上がっとこう>ぐらい煽り立てるようなものはあると思いますね。それとは逆に、腕組んでじっとしてる人とかもいますわ、ライヴ会場には。そういう人たちも<うむぅ、これは!>っていうノリにさせるものでもあるし」。
(毎度のことではある)向井の自信たっぷりな発言を聞くと、<うむぅ、これは!>と唸らせるようなアルバムでありながら(あるんです!)も、それがほっこりと出来上がったような印象さえ感じさせる。
「でも<余裕ですよ~>っつうようなもんでもないし、それはまあ、それなりにテンパってやってますから。まあ、軽妙なところと苦悩してるところっつうのは、当然、人として同居してますからね。それがそのまま出てると」。
とはいえアルバムには、やはり<躊躇>とか<迷い>といったものは微塵もない。メガネの奥の鋭い視線のように、奮い立たせられる音がギョッと睨みつける。それに文句のつけようはない。
「<オマエら聴け!><聴かせるぞ!><カッコイイ!と言わせるよ>っていう、傲慢ともいえる欲求はすごいあって。そう、まず第一に自分が<これはおもしろいですねえ>と。自分で<自分で言うのもなんだが、そうやろうが!>って。当然ながら<ナンバーガール、ちょっと寒いね>とかっていう意見もあるわけで、まあ、それは残念だとは思いますが、とにかく<聴かせる>っていうトライは絶対にするということですね」。
トライ……すなわち、聴き手との闘いである。熾烈な闘いに挑むには、それなりの精神と武器(作品)が必要なのだが、ナンバーガールは勝ち得る武器をいつも手にして挑んできたと思われる。しかし、強い武器を生産するまでに至る己との闘い、それもまた熾烈であろうと。
「闘いは……すごくありますね、自分をどう納得させるかっていう。それはかなりハードなものになってますし、さらに今回はいままででいちばんそれが激しいものでありましたよ。で、次回以降もまた、納得できる尺度が上がり続けるだろうから、どんどん闘いが激しくなってんだろうなと。そう思うと、ちょっと嫌な気分になりますけど、逆に、そのテンパってる感じ、それさえもおもしろくなっていく感じ、そして、それを求めていこうと」。