インタビュー

Jon Spencer Blues Explosion(2)

スティーヴ・ジョーダンを迎えて

 「確かにこれは、いろいろな意味でクラシックなロックンロール・アルバムだ。と いっても、事前に3人で〈今回は原点に戻ろう〉というような話をしたわけじゃない 。ただ単に自分たちの気持ちのおもむくままにやったら、こうなったというだけさ。 それに、このバンドを始めてからもう10年になるけど、最初から最後まで一人のプロ デューサーに任せてアルバムを作ったことは一度もなかった。今回はクラシックなロ ックンロール・アルバムを作るという目的があったから、そうしたアルバムの制作に 精通していて、僕たちを支えてくれる父親のような存在が必要だったんだ」

その〈父親〉として選ばれたプロデューサーは、スティーヴ・ジョーダン。彼は70 年代から活躍してきた敏腕ドラマーであり、プロデューサーとしてはキース・リチャ ーズやソウル・アサイラムなどを手掛けてきた人物だ。

「いろんなプロデューサーと面接したんだけど、スティーヴに決めた最大の理由は 、まず彼が気さくに話ができるナイス・ガイだったから。そう、人柄は重要さ。リラ ックスしてレコーディングできないと、いいアルバムは作れないからね。それに、ス ティーヴは素晴らしいミュージシャンであり、その点でまず尊敬できる。そしてプロ デューサーとしては、バンドの演奏を適確に捉え、有機的で、ソウルフルで、グルー ヴィーなサウンドのアルバムを作ることができる。この点において彼は、僕たちが作 っていた楽曲にいちばんふさわしい人材だと思ったんだ」

『Plastic Fang』は、演奏のノリを最重視したというようなラフさを装いながら、 その実、細部にも入念な作り込みがなされている。このことは、以下のジョンの発言 からもわかるだろう。

「今回は全部で19曲を録音&ミックスした。でも、全曲入れると長くなってしまう ので、曲順を考えながら最終的に14曲に絞ったんだ。スティーヴはレコーディングの 過程でアレンジに関して助言してくれたり、演奏の善し悪しを適確に判断してくれた 。もちろん、指示には素直に従った。彼のことを信頼していたからね。テイク数は、 曲によってぜんぜん違う。たとえば“Sweet And Sour”は、たった2、3回演奏しただ けでOKになった。この曲を演奏していた時はなにか特別なマジックが働いていたよう で、スティーヴもエンジニアのドン・スミスも興奮して踊ってたよ(笑)。逆に“ Over & Over”や“Like A Bat”は、スティーヴが細部の演奏にこだわったんで、20 回以上も録音をやり直した。でもそのおかげで、最良のパフォーマンスが記録されて いると思う」

ちなみにこの“Over & Over”にはバーニー・ウォーレルが、そして“Like A Bat ”にはドクター・ジョンが、それぞれゲストで参加している。

「この人選はスティーヴのアイデアだったんだけど、今回この2人といっしょにレコ ーディングできたことは、とてもエキサイティングな経験だった。そう、どっちも個 性的でクールだから」

ジョン・スペンサー・ブルース・エクスプローションの軌跡、その1

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掲載: 2002年05月09日 18:00

更新: 2003年03月07日 16:50

ソース: 『bounce』 230号(2002/3/25)

文/渡辺 亨