インタビュー

ロックじゃなくて〈ロックンロール〉としっかり発音したい、最近の気になる若き野郎ども

 ラウド・ロック、ヘヴィー・ロック、ミクスチャー・ロック……ロックというひと つの言葉をめぐってさまざまな呼び名が飛び交う現在のシーン。そうやってメインス トリームが賑やかにショウアップされるにつれ、本質はより曖昧になり、ロックンロ ールは〈ロール〉という下半身を失って、雰囲気だけの形容詞が継ぎ足されていくば かり。そんな状況のなか、ジョン・スペンサーは今回の新作で強力なロックンロール 宣言をしたわけだし、ロックンロールが持っていたタフさや猥雑さを、時代の空気の なかで吐き出そうとしている新しいバンドにも注目していかなければならないだろう 。

まずそういったバンドの筆頭として登場するのがストロークス。NYという土地の匂 いをはっきりと漂わせた彼らのサウンドは、NYパンクの系譜に位置するノー・ギミッ クなロックンロール。そのストイックな姿勢がシーンに清冽な印象を与えたことは記 憶に新しい。また、NME誌から〈ポスト・ストロークス〉という有り難た迷惑な紹介 を受けたフレンチ・キックスは、モッドっぽいシャープな荒々しさが魅力だが、スト ロ-クスやジョン・スペンサーと同じくNYを拠点に活動しているバンドだ。また場所 を西海岸に移せば、サイケデリックなフィードバック・ノイズを撒き散らすブラック ・レベル・モーターサイクル・クラブが現在イギリスを中心に大きな話題になってい るし、デトロイトのホワイト・ストライプスは今後要注意のガレージ姉妹。またミシ シッピにはジョン・スペンサーとスペンサー・ディッキンソンで共闘したノース・ミ シシッピ・オールスターズがブルージーにとぐろを巻いている。

しかし、おもしろいのは、これらのバンドのほとんどがアメリカよりも先に、まず イギリスで注目されてきていることだろう。もちろん、イギリスからもクリニックの ような一筋縄ではいかないようなバンドも登場しているが、本格的なレスポンスはこ れからに違いない。ロックンロールは何度も死んで甦る。いまハイプにまみれた土の なかから、ゆっくりその手が持ち上げられたばかりなのだ。

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掲載: 2002年05月09日 18:00

更新: 2003年03月07日 16:50

ソース: 『bounce』 230号(2002/3/25)

文/村尾泰郎

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