ココバット(2)
帝王であるがゆえの苦悩
「僕はがんばったつもりだったけど、前のアルバムはヤワっぽいとみんなから言われたんで、より激しいものを作ろうと。でも周りと比べたら、僕たちヘボいのは自覚してるんで、自分たちなりに激しいのを作りました」。
より激しい音を求め、プロデューサーにはマーク・ドットソンを起用、LAにて3週間のレコーディングをおこなった。
「マークは、良い周波数のまとまりってところまでわかってるんです。アンスラックス、ジューダス・プリースト、スーサイダル・テンデンシーズとか、古くからヘヴィーな音楽を作ってるから、なんでもわかってる。10年前の作品だって、ぜんぜん古い感じがしない。彼なりのヘヴィーな音で録ってほしかった。結果、大満足」。
本作での音の抜けは群を抜いているし、ボトムもブッといのだ。
「今回は全部アナログで録音したんですよ。それがすごく良くて、低音ファットな感じが作れた。プロデューサーの意見を聞いて良かったなって思いました。アナログのほうが迫力あるって、再確認しましたね」。
さて、『GHOST TREE GIANT』とは、いったいどんなイメージなのだろう。
「僕は花粉症がひどくて。その原因はどっかの山奥で、お化けの木が良くない粉をばらまいてる……。そういう話がモチーフになったんです」。
激しいサウンドと、ファンタジーにも近い歌詞や曲名。そのギャップの激しさもCOCOBATのおもしろさじゃないだろうか。
「“SPAGHETTI”って言葉が好きなんですよ。だって、滑舌がいいじゃないですか。“CHEESE AND SWORD”=チーズと剣(笑)。ヘヴィー・メタルのバカっぽさを表現したかったんです。なるべく周りとカブんない英単語使うのが好きなんです。意味は全部が後付け」。
さて、彼らはポルトガル語を歌詞に導入したりと、言葉の響き自体をサウンドに乗せることも重要視している。 「いままでにないパターンをやりたかった。やっぱりポルトガル語を使うと、ヘンなグルーヴが出ておもしろいんです。“ABOI”でもポルトガル語で、〈お茶こぼしちゃった〉とか、くだらないことを歌ってるんです。感じがいいから、辞書の例文をそのまま使ったり(笑)」。
カッコ良く英語で歌いたいけど歌えないという試行錯誤のなかには、意外なところからの影響もあったのだ。
「以前は英語で、サビだけ日本語ってパターンをやってた。そのうちに宇多田ヒカルが出てきて(笑)……、そっちのほうが完璧だから、僕たちがやる必要はなくなっちゃった。95、6年からやってたのに、あれには勝てないなって思いましたよ。それでキッパリ止めました」。