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インタビュー

キリンジ

昨年のアルバム『3』、今年に入ってリリースされた3枚のシングルと、これまで以上に2人の個性を際立たせることで、さらにでっかいキリンジ像を築き上げてきた泰行と高樹。ならば、それぞれの声を訊かぬわけには……

INTERVIEW FEATURE 1 堀込高樹(ギター)

 本来、リスニングとは一種の訓練であり、聴けば聴くほどよりよい音楽が耳に届くようになってくるのがまた楽しかったりするんだけど、ほんじゃあ、いい音楽は訓練しなきゃ聴けないのか?ってぇと、ンなこたぁないワケで、たとえば〈音楽に目覚める〉っていう現象はな~んも音楽的知識・経験のないマッサラな耳に〈イイ音楽〉が飛び込んで初めて引き起こされるものだからしてハイ。キリンジが奏でているのは、耳差別しない、あたりまえにイイ音楽。そんなことをつくづく思わせる作品たち――とくにアルバム『47'45"』以降、“エイリアンズ”をはじめとする忘れられない数枚のシングル、アルバム『3』、さらに数枚のシングル、そしてアルバム『Fine』。最新作。

 「今回は、取材で〈社会とリンクしてる感じがする〉ってのはよく言われますね。世相とか時代、そういう言葉に当てはまる感じ、と。いままでもちょっとはあるんですけど、わかりにくかったと思うんですね。聴く人によっては〈どこまで本気かわからない〉っていうのはあったかもしれない。今回は、10人が聴いて、その解釈のブレは以前ほどはないと思うんですよ。世の中にあまり敏感じゃない人間でもヤバいんじゃないのかな?という空気は感じるわけですよ、普段、生活してて。喧嘩が多いとか、痴漢がやたら多いとか、人が暗い、とか。そういうことがより実感として感じられるっていうのがアルバムに反映されているような気がするんですよね」。

 こう語る堀込高樹。キリンジという二人組が抱える優れたソングライターのうちのひとり。総数ふたり。それで十分。もうひとりは堀込泰行。戸籍上は兄弟、高樹は兄。でもそれはキリンジ的にさしたることではなく、ソングライターふたりの世代差を微妙に表す記号でしかない、かも。高樹の言うとおり、今回の『fine』では、以前から現在進行形のポップ・ミュージックとしての本文をわきまえていたキリンジ・ソングスが、それとわかりやすい形で収められている。それゆえ、基本的にはドリーミーな響きをもつ楽曲群であるが、そこはかとないビターネスが。AOR? MOR? その呼び名はホントどうでもいい。聴いた人判断でオーケー。隅々まで丁寧に細心に、かつ大胆にヤンチャに作られているのはこれまでどおりだからして。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2002年05月30日 16:00

更新: 2003年03月06日 19:33

ソース: 『bounce』 227号(2001/11/25)

文/フミ・ヤマウチ、望月 哲