インタビュー

The Flaming Lips

傑作『The Soft Bulletin』から3年。フレーミング・リップスが贈る最新作『Yoshimi Battles The Pink Robots』は死と再生の物語。ありったけの色彩とエモーションをブチこんだサイケデリック・ショウの始まりだ!


〈ザ・フレーミング・リップスは、あなたが人生と、このレコードをエンジョイしてくれることを願っています〉。

傑作の誉れ高い前作『The Soft Bulletin』から3年、あなたはフレーミング・リップスのCDをどこかで手に取り、ジャケットに日本語で印刷されたそんな言葉を目に留める。そして、あなたは少し良い気分になるだろう。

現在活動をしているどれほどのバンドが、聴き手に何かを願っているのかどうかはわからない。けれど、少なくともフレーミング・リップスは切実に願っている、ということだ。あなたの人生に幸多からんことを。自分たちの音楽が、その一助にならんことを。

さて、いままでフレーミング・リップスは〈サイケデリック・バンド〉だと捉えられてきた。そして、アメリカ国内に限って言えば〈大学生好みのオルタナ・バンド〉だと。また、〈子供じみた実験が好きなポップ・バンド〉だとも。なにしろ、すべてのディスクを同時に再生しなければアンサンブルが完成しないという、4枚組のキワモノ作品『Zaireeka』を制作した当事者なのだ。その時、レコード会社の担当者がパニックに陥っただろうことも想像に難くない。愉快痛快! それでいて彼らの音楽は、とてもスウィートでポップだ。近くにとんでもなく頭の固い人がいなければ、ドライヴやパーティーのお供にしたって大丈夫。と同時に、のめり込んだら最後、まさに〈クラウズ・テイスト・メタリック〉。金属の味がするフワフワした雲に乗り、あなたをどこかに連れて行ってくれるだろう。

「基本的に音楽をやってるのは、単に自分がやりたいからさ。でも、作品が完成間近になると、やっぱり他人に聴いてほしい気持ちが強くなるんだよね。料理する時の気分に似てるよ。料理するのが好きだから台所に立つんだけど、作った料理を食べて気に入ってもらえて初めて満足できる、そんな感じなんだ」。

ウェイン・コインの、飾らない今の気持ち。彼こそがフレーミング・リップスのヴォーカリスト/ギタリスト。そして、話題は新作のタイトルのことに移っていく。問題のタイトル『Yoshimi Battles The Pink Robots』──ヨシミがピンクのロボットと闘ってる──について。〈ヨシミ〉とは、あのボアダムスの、そして、OOIOOのYoshimi P-weのことだ。

「タイトルを思いついた時は、まだヨシミが参加してくれた曲をアルバムに収録するかどうか決めてなかったんだ。それに、日本では〈ヨシミ〉という名前がとてもありふれた名前で、ボアダムスのヨシミだとわかってもらえるかどうかも不安だった。でも、けっこう多くの人が彼女のことを知ってるみたいだから安心したけどね。ヨシミは物静かで威厳のある子なんだけど、同時にものすごいパワーを併せ持っている。つねに闘ってる人ではなくて、どうしても闘わなければならない時がきたら毅然と闘う、みたいなスピリットの持ち主だと思う。意識的ではないけど、彼女が僕の創造の産物を象徴していて、同時に僕の創造の産物が彼女を象徴しているところはあると思うよ」。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2002年08月01日 12:00

更新: 2003年02月10日 15:00

ソース: 『bounce』 234号(2002/7/25)

文/福田 教雄