インタビュー

The Flaming Lips(2)

フレーミング・リップスは闘う

「コンセプト・アルバムではないけれど、レコード全体を通してつながっている、いくつかの〈サウンド・ストーリー〉はある」と、ウェインはプレス・シートに書いている。それはつまり、彼による楽曲コメントから引用すれば、例えば冒頭の“Fight Test”は〈極限まで闘わなかったことに対する歌い手の後悔〉。そして2曲目以降、死ぬまで闘うようプログラミングされているロボットが彼女に恋してしまい自殺したり、ヨシミがロボットと闘い、そして勝ったり(しかし、ヨシミは自分がなぜ勝てたのか疑問に思っている)、また、愛や催眠術や宇宙をテーマにしたさまざまな曲が立ち現われ、そして、順々にトーチが渡されていく。その中に、もうひとり日本人女性について歌った曲がある。彼らの友達だったというひとり。彼女は病に冒され、亡くなってしまったのだという。そして、彼女の姉妹から、その死を報せる電子メールがウェインのもとに届くようになる。翻訳が不完全で最初はなかなか解読できなかったものの、届くメールの回数が重ねられるうちに、バンドはその事件を把握できるようになった。そして、その事件は、今作を制作するひとつの契機にもなっているそうだ。

「彼女の姉妹を励ますつもりで書いた曲。でも、結果的には、僕自身への励ましの歌になったと思う」と、ウェインが解説しているのは“It's Summertime (ThrobbingOrange Pallbearers)”という曲のこと。

「心の中にある感情があまりにも強くてパーソナルなものだと、時々、自然と心の中から溢れて目の前の紙にそのまま放出されるんだ。あの曲の歌詞はそうやって自然に出来たもので、ムードを保ちながら書き進めていったものだったんだ。無意識に任せてね。意識して書くより、断然いい歌詞が出来たと思ってるよ(笑)」。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2002年08月01日 12:00

更新: 2003年02月10日 15:00

ソース: 『bounce』 234号(2002/7/25)

文/福田 教雄