The Flaming Lips(3)
30歳になったらちゃんと働こうね!
〈外を見てごらん/きっと気づくだろう/夏が来たよ/可能性に満ちた季節〉。これが、その歌詞。実際、本作を聴いて、とても励まされる人は多いだろう。〈励まし〉だなんて、場違いな言葉だろうか? では、こういう言葉ならどうだろう? 彼らはその音楽で〈強さ〉と〈脆さ〉がひとつのものだということを教えてくれる。殺人ロボットもヨシミに恋してしまう〈脆さ〉を持っている。また、自分の強さに疑問を持つヨシミも、ある種の〈脆さ〉を持っている。夢うつつでいるようなウェインの不安定で弱々しい歌声にしても同じこと。悲しい曲なのに、とても強く響いてくるからだ。
97年の『Zaireeka』(Warner Bros.)
「確かに、僕の歌い方のどこかに他人が共感できる部分があるのかもしれないね。“Do You Realize?”という曲に〈知り合いがいつかみんな死んでしまう日が来ることに気付いたことある?〉という一節があるんだ。最初は直接的すぎてダサイかなと思ってたんだけど、ドラマーのスティーヴン・ドローズに聴かせたら、心動かされる歌詞だと言ってくれた。自分の作ったものを客観的に見るのはすごく難しいことなんだよね。その魔法がどんなものか、いまでもよくわかっていないんだけど、わかってしまうと魔法が消えてしまうような気もしてね。こういう悲しい内容の歌がみんなを励ますことになってるのは嬉しいことだけど」。
そして、人生の先輩たるウェインに若者たちに向けてのアドヴァイスをたまわってみた。
「先日、たまたまトム・ウェイツのインタヴューをTVで観たんだけど、彼がこう言ってたんだ。〈若い時に早く大人になりたくて、若者らしく人生を過ごしていなかったことを後悔してるよ〉って。だから、僕に言えることは、トム・ウェイツじゃなくて、僕みたいになってほしいってことなんだ。バカでお気楽さんでいいじゃないか! 若いうちにどんどん楽しんでほしい。でも、30歳になったらちゃんと働こうね!」。
さあ、フレーミング・リップスは目の前の現実にファンタジックに対峙してみせてくれた。そして、可能性に満ちた季節──夏も到来した。「現実の体験で新しい発見をして、それが次のイマジネーションの肥やしになるんだ」とも語ってくれたウェイン。そう! フレーミング・リップスは、あなたが人生と、このレコードをエンジョイしてくれることを願っている。それが、この素晴らしいニュー・アルバム『Yoshimi Battles The Pink Robots』の真相だ。
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