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インタビュー

次代を担うビートメイカー、リック・ロックに大注目!!

MCとしての圧倒的な優性を誇るイグジビットだけに、アルバムのたびに優れたトラックメイカーたちから良いビートの提供を受けてきた。今回の『Man Vs. Machine』にも全米各地からトップクラスのビート職人──ジェリーロール、エリック・サーモン、ビンク、ロックワイルダー、エミネムら──が馳せ参じ、いずれも主役を最大限に引き立てる素晴らしいトラックをあつらえた。が、今作のキモはリック・ロックのビーツにある。

一般的にはジェイ・Zの“Change The Game”で登場した新進だということになっているリックだが、ベイエリア~西海岸ではすでに確固たる地位を得た存在である(あのジュヴィナイル・コミッティーでデビューしたリック・ロックと同一人物だとしたら、プロとしてのキャリアはすでに10年に及ぶ)。リックはマイク・モズリーのステディ・モビン・プロダクションズでプロデュース・ワークを本格的に学び、主にウェストコースト~ベイエリアを拠点に活動を続けてきた。その時期の顧客はMCエイト、2パック、ミスティカル、E-40ら大物揃いだ。

98年にラップ・トリオ、コズミック・スロップ・ショップを結成したリックは、同時にマイクのもとから独立。メロディアスなウワモノを多用したダークなファンク・ビートから、分離のクリアなドラムスを簡素にループしたものへサウンドの方向性を徐々に転換/確立していく。そんななか、ジェイ・Zから直接オファーを受けて彼の“Change The Game”に辿り着き、その後はエリアを問わず数多くの作品を手掛け、いままさにトップ・プロデューサーの仲間入りを果たそうとするところだ。リックのビーツは、パキッとした音色/質感で耳残りするドラムスを基本に据え、トラック全体にハッキリした輪郭とスウィング感を与える、麻薬的なループ。イグジビットの前作『Restless』でも“D.N.A.”を手掛けていたのだが、今回は3曲を制作、Xの猛々しいラップが炸裂するシンフォニックな“Symphony In X Major”、バウンシーな“Break Yourself”、ソウルフルで温かみのあるループを持つ“Missin' U”と、一定の感触にとどまらず、いずれもが物凄い完成度だ。今後も注目すべき才能だろう。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2002年08月29日 12:00

更新: 2003年02月10日 13:13

ソース: 『bounce』 235号(2002/8/25)

文/出嶌孝次