インタビュー

Foo Fighters(2)

キッズの頃に持っていたエネルギー

さらに本作については“Tired”でブライアン・メイが参加しているのも見逃せないトピックだ。彼との共同作業は映画「MI:2」のサントラ以来となる。

「ドラムスのテイラー・ホーキンズが以前からブライアンと知り合いだったんだ。俺たちがロンドンでライヴをやったときも、ブライアンがロジャ-・テイラーまで連れてきてくれてクイーンのカヴァーをしたこともあった。あっ! いま思い出したんだけど、 ブライアンと初めて会ったのって92年。ニルヴァーナの頃、MTVの授賞式だよ!」。

インタヴュー中、ソファーにゆったりもたれながら話していたデイヴなのだが、ここで突如身を乗り出した。

「“Lithium”をプレイしたあとに機材をブッ壊して、そのときクリス(・ノヴォゼリック)がベースを高くぶん投げたんだよね。でも、ベース取り損ねて頭に直撃(笑)。で、ステージ降りてみたらクリスが行方不明なんだよ。俺たち、奴がどこかで頭から血を流して失神してるんじゃないかって慌てて探し回ったんだ。そして、とある部屋を覗いてみたら、なぜかクリスがブライアンとシャンパンで優雅に乾杯してたっていうさ(笑)」。

ブライアンの話となると、一際目を輝かせていたデイヴの姿が印象深い。その様がまさに今作を象徴するストレートな原動力を示しているように思うのだ。

「ガキんときに憧れてたミュージシャンに会うと、なにか忘れてたものが戻ってくる感じってあるんだよね。デヴィッド・ボウイやイギー・ポップと会ったときもそうだった。あと、俺としてもいちばん嬉しいのは、このアルバムを聴くと、キッズの頃のエネルギーが戻ってくる感じがあるんだ。なんか初めてバンドを組んだときみたいなさ。ブライアンといっしょにやって、自分のギター・プレイがいかに子供じみたものかが身に染みたってのもあるんだけどさ(笑)」。

8年目に掴み取った、これぞ最高傑作。疑いようもない。実感させられるのはフー・ファイターズは依然気持ちいいほど悪ガキだということ。そして、改めて思う。ロックンロールはまだまだ元気だと。『One By One』はそんな幸福な興奮を届けてくれる一枚だ。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2002年10月31日 16:00

更新: 2003年02月13日 12:12

ソース: 『bounce』 237号(2002/10/25)

文/田中 大