インタビュー

インディア・アリー

『Acoustic Soul』で満場の心を温かく包んだインディア・アリー。より素直な心で編まれたというニュー・アルバム『Voyage To India』にはそれを超える感動が待ち受けている。インディアと行くインディアへの旅へようこそ!

〈旅〉の途上で生まれた作品


 来日公演の当日、10月3日に27回目の誕生日を迎え、観客やバンド仲間から祝福を受けたインディア・アリー。昨年初頭にデビューしてからというもの、彼女には公私共に本当にハッピーな出来事が続いている。そして、新作『Voyage To India』も、そんな彼女の心境を映し出したかのような和やかで温かなムードでいっぱいだ。

「自分の気持ちに正直でありたい……っていう気持ちが出たのが今回のアルバムね。『Acoustic Soul』でレコーディングのプロセスを身につけたから、今回は自分自身をいかに上手に表現するかっていうことに集中できたの。私はライヴでやっていることをそのままスタジオに持ち込みたいと思ってて、今回はその点が少し実現できたかしら」。

 そのインディアと新作で大半の楽曲をプロデュースしているのが、今回の来日公演にキーボード奏者として同行していたシャノン・サンダース。ナッシュヴィル出身の彼は98年に地元のインディー・レーベルから『Outta Nowhere』というアルバムを発表していたシンガーでもある。

「シャノンのアルバムは聴いてみたら大好きになった。『Outta Nowhere』の曲も全部歌えるわよ。彼と出会ったのは『Acoustic Soul』を録っていたときで、ナッシュヴィルでも録音していたから、それが縁ね。今回のアルバムに入ってる“Get It Together”は実はその時に作ったのよ。それで意気投合して“Brown Skin”もいっしょに書いて、ツアーのミュージック・ディレクターに彼を招いたの。今回の曲はそのツアー中に書いたものが多くて、そこで自分のアイデアを彼に話して、ふたりで盛り上がって形にしていったわ。とにかく彼の音楽に対する考え方やアイデアを出していく過程が自分と合っているの」。

 そのように、まさに〈ヴォヤージ〉の途中で生まれたのが、新作『Voyage To India』というわけである。

「そう、実際にツアーで自分が旅してきたことと精神的な成長の過程を旅にたとえたのよ」。

 ところで、前作では“Wonderful”という曲をスティーヴィー・ワンダーに捧げていたインディアだが、今回のアルバム・タイトルは、そのスティーヴィーが手掛けたサントラ『Journey Through The Secret Life Of Plants』(79年)収録曲と同じだったりするのにも、何だか興味を惹かれる。

「スティーヴィーの曲は、スピリチュアルで信仰的なものでも、〈神〉とか、そういう言葉を使わずにメッセージを伝えているってところが凄いと思う。そんな精神がいまのソウル・ミュージックに影響を与えているはずよ。彼こそが偉人の中の偉人。『Innervisions』は大好きなアルバムだし、『Jungle Fever』に入ってる“I Go Sailing”、それに“Isn't She Lovely”も好きだわ」。

 そこで、『Voyage To India』からの第1弾シングル“Little Things”では、スティーヴィーの“Isn't She Lovely”よろしく赤ん坊の笑い声(?)を入れていたりもする彼女だが……。

「実際はレコーディングしていたスタジオのオーナーでエンジニアの人の子供がたまたまその場にいて、彼が子供たちの声を入れようって言うから、それでやったの」。

 ちなみにその〈オーナーでエンジニアの人〉というのは、前作にも参加しているエイヴリー・ジョンソン。アトランタ界隈ではベース奏者としても有名な存在だ。

「そう、彼はベース奏者としてもプロデューサーとしても素晴らしいの。シャノンとも幼馴染みで、もともとはアトランタのクロニカルっていうグループで活動してて、シャノンやシルクのリル・Gといっしょに音楽をやってた人なの。そう、それでね、私はスタジオを選ぶとき、とにかくシンプルな場所を求めるんだけど、エイヴリーのスタジオは家の地下にあって、作りもシンプルだし、人が頻繁に出入りしない理想の場所なのよ」。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2002年10月31日 12:00

更新: 2003年02月13日 12:12

ソース: 『bounce』 237号(2002/10/25)

文/林 剛