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インタビュー

Shaggy(2)

シリアスな面をテーマにしようって思った

 彼の言葉を裏付けるように、この『Lucky Day』にも、『Hot Shot』で多くを占めていた女の子絡みの楽しんでナンボの楽曲が並んでいる。〈ハイネケンのボトルを持って、心に浮かぶのはエッチすることばかり〉と歌う“Shake Shake Shake”しかり、フィーチャリングのブライアン&トニー・ゴールドが〈ヘイ、セクシー・レディ、イカシてるね〉と歌うタイトルそのままの口説きソング“Hey Sexy Lady”しかり。だが、当アルバムにおいてそんな方向性はむしろ後退してると言ってよい。アルバムを方向づけたのは、とある収録曲。

「南アフリカで“Strength Of A Woman”を書いたんだけれど、そのときにこの雰囲気とヴァイブはいいなと思って、アルバムの方向性が見えた。この曲は女性に敬意を表しているんだけど、アルバムもシリアスな面をテーマにしようってね」。

〈彼女はオレの船の帆を膨らませてくれる風/彼女の立っている大地に祝福を〉――そんな一節が歌われる件の“Strength Of A Woman”に見られるまっすぐな眼差しはしかし、彼にとって変化を意味することではない。一言でそれは〈成長〉だと彼は言う。

「レコードに関して言えば、自分が成長したところをこれまであまり見せてなかった。それこそ(セカンド・アルバムの)『Boombastic』の時代からシリアスな曲は書いてるんだよ。ただ、それが注目されることも前面に出ることもなかっただけなんだ。前作を見ても、“Angel”や“Hope”はラヴソングだけど、決してパーティー・ソングじゃなくシリアスな曲だ。今回はオレがシリアスなソングライターだってことを見せたかったし、今までどおりユーモアに溢れた曲にしても、ユーモアがありながらも真面目なことを歌っている曲が増えたと思うよ」。

〈正そうという努力は決して大げさなものじゃない〉と歌う“Lost”、〈スキンヘッドやドレッドロックにパワーを〉と第三世界から出てきた自分の出自を綴る“Waliking In My Shoe”、タイトルが内容を象徴する“We Are The One”……彼の言ったことは、音楽のアプローチと共にそのままアルバムの数々の楽曲に当てはまる。肩肘張ることなく、普段話してるそのままの言葉で綴られるリリック(「歌詞は難しいことを書くんじゃなく、一般の人が共感できるものを書くのが好きだね」)。抑制されたテンションで歌うように言葉を乗せていく、穏やかで温かいスタイル(「曲を書くときはつねにメロディーが頭にあるし、できる限りメロディアスな曲に仕上げることには意識的に取り組んでいる」)。決して上げ上げな方向には向かうことなく、むしろ落ち着いた佇まいのものが並ぶ曲調(「メロディアスな自分のヴォーカルを生かすものであることに重点を置いている」)。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2002年11月07日 16:00

更新: 2003年02月13日 12:09

ソース: 『bounce』 237号(2002/10/25)

文/一ノ木裕之

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