インタビュー

Shaggy(3)

ドン底を経験したこともあった

 彼の言うとおり、このアルバムで広がっている音楽性はバランスこそ違え、前作からの変化を示すものではない。だとしたら、結果的にマンモス・ヒットとなった『Hot Shot』から『Lucky Day』へと至るシャギーの音楽性は、彼にとってどこにも無理がなかったわけだ。無理のないところにプレッシャーなど生まれる余地もない。冒頭の素直な発言も自信の表れというより、彼の音楽に対するスタンスがそうさせていたのかもしれない。

「別にインターナショナルな成功を考えてアルバムを作ってきたわけじゃない。そんなものはつまらないよ。ボブ・マーリーにしろ、イエローマンにしろ、彼らは彼らなりのレゲエというものを世に送りだした。それと張り合おうとしても無駄なことだし、オレは違うことをやりたかっただけさ。ボブ・マーリーのスタイルはグレゴリー・アイザックスともデニス・ブラウンとも違う。トゥーツ&メイタルズにしてもジミー・クリフにしても、それぞれにそれぞれのスタイルがある。同じように、自分ができること、自分がやって満たされること、気分がいいものを考えて今まで曲を作ってきた。それだけさ」。

 自分が満たされることをやって多くの人に認められる……それは誰もが羨むキャリアだろう。

「自分でもホントにいいキャリアを歩んできたと思う。ただ長いキャリアの中ではアップダウンもあるし、ドン底を経験したこともあった。レゲエそのものを見ても決してメインストリームの音楽じゃないけど、そんな状況に打ち勝って、自分の文化を忠実に他の人たちに知らせながらもメインストリームにクロスオーヴァーすることができたのは嬉しいね」。

 メインストリームにクロスオーヴァーすることから逆算して作られた音楽はつまらない。シャギーの音楽は彼が言うように誰にもおもねることなくできたものかもしれない。それはもはやレゲエ云々というバックグラウンドを越えたシャギーの音楽となっている。そして、そんなシャギーの音楽を世界中のたくさんの人たちが好きだってこと。

▼ シャギーの作品と関連盤を紹介。

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掲載: 2002年11月07日 16:00

更新: 2003年02月13日 12:09

ソース: 『bounce』 237号(2002/10/25)

文/一ノ木裕之

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