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インタビュー

フィルムの中のジェニー

 ジェニーがほんの数年で世界的なスーパースターとなったことは、急逝した実在のラテン・ポップス歌手に扮した通算6作目の出演映画にして初主演作の「セレナ」(97年)をいま観ると、なんとも言えない違和感を覚えるあたりから納得できるだろう。例えば「ザ・セル」(2000年)は監督の明快な変態趣味に加え、小児専門の精神分析医という不似合いな役を演じたことも幸いし、壊れた迷作となりえていた。「イナフ」(2002年/日本では新春公開予定)が、今ある彼女の偶像を壊そうとしているのだとしたら、夫に脅されたり、髪をボブにして、イメチェンして夫に復讐しているものの、どうも壊し方が中途半端だ。映画館の中で彼女と出会った後でプロモ・クリップを見た観客にとって、彼女はコッポラの「ジャック」(97年)では小学校教師(ロビン・ウィリアムスが小学生役なのと同じくらい不自然でいい!)、オリヴァー・ストーンの「Uターン」(97年)ではファム・ファタール、スティーヴン・ソダーバーグの「アウト・オブ・サイト」(98年)ではシャネル・スーツで銃を構えるFBI捜査官……と男の妄想の具現化だった。新曲“Jenny From The Block”のプロモ・クリップは、パパラッチの盗撮映像を忠実に再現することで、そうやって作り上げられた偶像を実像と虚像の間で意図的に揺らせてみせた傑作だが、現在企画中のウィル・スミス共演作「スター誕生」のリメイクも、そのクリップくらい彼女がスーパースターであることを逆手にとり、それに対する皮肉と楽屋オチが効いた作品になればサイコーなのだが。

ジェニファー・ロペスが主演した近作のDVDを紹介。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2002年12月09日 12:00

更新: 2003年01月22日 13:30

ソース: 『bounce』 238号(2002/11/25)

文/小林雅明