MICADELIC(2)
人が入ってる感じ
「あー、けっこうストレートっていう反応が多いんですよね」(DJオショウ、DJ)。
「毎月イヴェントをやってて〈殿堂〉入りの曲をやり飽きた結果、何かライヴ用に新曲を作ろうってところから始まったんですよ。レコードで聴いたことがないお客さんもすぐに掴めるような感じに……と思って出来たのが、2曲目の“アンドウトワ”なんです。“劇空間プロラップ”もそうで、やったら手応えがあって。ライヴ目的で曲を作っていく過程でアルバムを作る話が付いてきたっていうか(笑)。だから、1年半の間はほとんど制作に当ててたようなもんですね」(ダースレイダー)。
ストレートでキャッチーな印象はそういうライヴ重視の曲作りからきていたのだ。
「あと、ライヴで何回もやってて、楽曲がお客さんにも浸透してる曲をレコーディングするっていう順序はデビュー以来だったんで、逆に新鮮でしたね」(ダース)。
なるほど。そのように客観的に楽曲を見つめて練り込めた結果、この異常に巧い構成が生まれたようにも思えるんだけど?
「それがなかったんですよ。アルバムの起伏とかよりも、〈あと何分入んの?〉ってことだけ考えてて(笑)。でも、結果的に巧い流れができてますね」(ダース)。
さて、今回も幅広い楽曲が揃ってるけど、ビートを作る2人の方向性が何となくバラけてるのが、まずは興味深い。
「オショウが作ってくるものはわりと自分でわかってる感じだったし、土臭くてブレイク感がドーンとあって……っていうのがオショウだから。自分は何でも好きだし、そういう意味では好き勝手な曲もド真ん中のものも、楽しくやれましたね」(ダース)。
「今回は、自分がいままでやったことがない……ラップを乗せた形が想像もつかないようなビートがいろいろ上がってきて、毎曲のトラックを待つのが楽しみでしたね。オショウのはわりとマイカデリック!って感じで、ダースの曲にはやっぱり幅の広さを感じましたね」(真田人、MC)。
「オレは南部系のバウンスとか昔から好きで、いま多いシンセとかでグイッと聴かせるタイプじゃなくて、もっと手作り感のある感じでやれねえかな~と思ってて、それが今回は変なトラックにできて良かった。ああいう音って、本当に濃いとこまで突っ込んでいくとイイ意味でダメなビートが多いじゃないですか(笑)。イン・ヤン・トゥインズの音とか人が入ってる感じですもんね」(ダース)。
だからか、『IT SELF』にどこかから借りてきたようなビートは見当たらない。それはたとえば、オショウ作の“劇空間プロラップ”がビッグビート+オルガンの効いたファンキー・ソウル=オショウならではのビートになっていることでもあきらか。それこそがダースレイダー言うところの「人が入ってる感じ」なのだろう。
彼らと同じく昭和52年度生のアルファが登場する“52年度通信カーリング部同窓会”のバカバカしいディスコ・ファンクもそうだし、GAGLEからHUNGERが参戦した“Z斬”におけるちょんまげバウンスもそうだ。その他、前作にも参加していたゴスペル・シンガーのぶんかが強烈な存在感を放つ“月夜の晩に君さえいれば・・・”などなど、ダースレイダーの挑戦的な試みはアルバムの要所で顔を覗かせる。一方のオショウが地元・福島への愛憎(?)を県花に託したインスト“しゃくなげスタイル”は全方位型のファニーなブレイクビーツ。
「最初に聴いた時、オショウに〈DELUX COMBOでかかってそうだね〉って言ったら、オショウもそう思いながら作ったっていう……」(真田)。
「で、オレが実際にプレイする」(ダース)。
「いいね~。グループっぽいね(笑)」(オショウ)。
や、グループでしょ。と、メンバー個々の顔がより見えてきた……とはベタな言い回しだけれども、もとからよく見えてた真田人の面構えがよりダイレクトに迫ってきそうなのが、彼の初ソロ曲“BRUSQUE BLUES”。「前から周りにはやれって言われてたけど、逃げまくってきた」と相当な後ろ向き発言をかます真田人だがこれをきっかけに、ついにソロ作品も構想中だとか。
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