インタビュー

MICADELIC(3)

サーチ&デストロイ

 と、これだけで十分なヴァラエティーを醸しているにも関わらず、外部のトラックメイカーを起用し、作中にいいアクセントをいくつも用意。GAGLEのDJ MITSU THE BEATによる“SHARPEN'S YOU UP”の二枚目感も新鮮だし、餓鬼レンジャーのビート職人2名の参加もありえない成果を上げた。とはいえ、GPによる“地球最後の日”は、オショウの自称「ラッパー泣かせ」なブッ壊れ演技が強烈すぎるのだが、これはまあ、聴いてのお楽しみ(POCHOMKINは〈ヒドいね~〉と絶賛したとか)。餓鬼からはもうひとりHIGH SWITCHが“RAW POWER”を提供。なんか異様なほどラフでロウなドラムの鳴りがスゴいですな。

「この曲は4チャンネルしか使ってなくて、マイクも1本で録ってるんです。サビも掛け合いも重ねたりしないで、まさにナマで再現できる、ライヴっぽい曲ですよ」(ダース)。

 で、“RAW POWER”がアッパーの極みなら、GARBLEPOOR!のDJ ITAO作の“破壊と創造”はその真逆をさすらう凄まじいダブ・トラック。IWASAによる微風のようなピアニカも不穏だ。

「〈サーチ&デストロイ〉っていうのがテーマで、探して壊して……それで作るっていうのがヒップホップだし」(ダース)。

「オレはITAOとは幼稚園からいっしょなんですけど、曲中でスクラッチの掛け合いをやるのは初めてで、楽しかったですね~」(オショウ)。

 テーマ的にもヘヴィーな“破壊と創造”で一回幕を閉じて……美しすぎる後日談のような終曲“M&M”はしかし、〈96年〉という彼らの過去を振り返る内容だ。盟友HIDENKAとTARO(この2人+オショウの3人で活動していたのがマンカインドマーカー)をフィーチャー、歩んできた道程と続いていく未来へ向けて気ままにマイクを回す。何とも楽しそうで、後ろ向きじゃない意味で過去に思いを馳せてみたくなる……泣ける一曲だ。特にリリックの内容をある意味共有できる身としては。

「自分が自分のことを続けてないと歌えない内容だし、立ち止まって振り返るんじゃなく、自分らは自分らで前に進んでるからこそ、その一歩目が何だったのか言える。今回、やっと言えるようになったんですよね」(ダース)。

 しかし……美しすぎるぞ、マイカデリック! これでいいのか(いいんだけど)!

「ライヴが日本一だっていう自信はありますよ。たとえ引かせたとしても、日本一引かせます(キッパリ)」(オショウ)。

 あ、ソレ最高です。

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カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2003年05月08日 12:00

更新: 2003年05月08日 17:18

ソース: 『bounce』 242号(2003/4/25)

文/出嶌 孝次