『IT SELF』の構成要素(の一部)をダースレイダーの解説を交えつつ解析
インタヴュー本文に頻出する言葉や曲名からもわかることだが、今作『IT SELF』のひとつの特徴は、通常ヒップホップではあまり触れられない多様な音楽からの自由闊達な引用である。ダースレイダーいわく「そのへんをやらかしてるのはオレです」とのことでその構成要素について簡単に触れていこう。
まずは“RAW POWER”で偏愛を捧げられている(?)イギー・ポップ。やはりダースのお気に入りアーティストだそうだ。また、フルートの音色が印象的な“月夜の晩に君さえいれば・・・”は「ビートはバウンスっぽいけど60'sっぽい感じにしたくて……イメージとしてはジェスロ・タルかな」とのこと。他にも曲名からして期待させる“マハラジャ”。覚醒的なシタールのサンプリングに、何かヘンテコなビートのズレそうでズレない融合具合に笑えたりトベたりするのだ。これはジョージ・ハリソンが亡くなったことにインスパイアされた気がしなくもないけど、「まあ、『Wonderwall Music』は好きですけど、この曲はラヴィ・シャンカールかな? それよりオレがカレー好きってことのカミングアウトが大事だから……」とのこと。カレーね。
ふたたびイギーを思わせる“破壊と創造”はラップの入りからドアーズ〈音楽が終わった後に〉を英詞で引用、ボブ・ディランばりに〈どんな気分?〉と語りかけ、その後もキング・クリムゾンやボブ・マーリーなどを思わせるロック・バビロンなリリックの嵐だ。
「IWASAさんにはヤバいピアニカを吹いてもらえましたね。オーガスタス・パブロ風で」。
こうしたテーマを採り入れるのもダースにとってはある種の「パンクなノリ」なのだという。いわく「ライヴでも、ギター持ってないぶんもっと動けるぜ、ぐらいの。それに、楽器を弾けないことってパワーになるんですよ」。
その意気たるやパンク! カッコイイね!
▼文中に登場するアーティストの作品を紹介。
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