こんにちは、ゲスト

ショッピングカート

インタビュー

Little Tempo

ダブを深化させて独自の音楽性を手に入れてきたLITTLE TEMPOが新たな挑戦に挑む! 妖しい光を放つ新作『MUSICAL BRAIN FOOD』に潜むものとは……?

ケンカ飲み会みたいなこともして


 LITTLE TEMPOの音を聴いて抱くイメージは人それぞれだろうと思う。しかし、ダブ、それも相当に心地良いダブの響きこそが、やはり聴き手のなかに共通して残るものであっただろう。LITTLE TEMPOはそんな快楽をいつも的確かつ洒脱に捉えてきた。そう、アルバム『KEDACO SOUNDS』のジャケットにうっすらと浮かぶ、あのスピーカーを携えたクラゲそのもののように。

 しかし、彼らのニュー・アルバム『MUSICAL BRAIN FOOD』は、これまでにないほど強く聴き手のなかに介入してくる音になっているのだ。それは一音一音の彩りや響きから、曲の展開や編集に至るまでのあらゆる側面において〈何かが変わっている〉と感じさせるのに十分な仕上がりなのだ。

「やっぱり一回精神的なものをみんなで鍛え直して、それが音に出ているんだと思うんですよ。前はデモテープを生楽器に差し替えて、ある程度予測できない感じに仕上がっていたらだいたいOKだったんですけど、みんなそれぞれ個別の活動をしていて、聴く音のツボというのもだいぶ変わってきたから、そういうようなことだけだと満足できなくなったんですね」(土生“TICO”剛 : 以下同)。

 リーダー格のTICOこと土生剛はそう冷静に自己分析をしてみせるのだけど、完成に至るまでには、実際のところシビアな状況があったようだ。

「メンバーがひさびさに集まったときに――サッカーとかで普段走ってないとキツイのといっしょなんですけど――チームワークが取れてなくて、最初の段階でかなり熱が上がらなかったんですよ。そんなんで、一からやり直さないといけないなと思って。まずは思ったことをバンバン言い合うとか、ケンカ飲み会みたいなのもして、徐々にバンドとしてのヴァイブが復活してきた感じでしたね。制作期間も意外と長かったんですけど、曲作って、練習して、録音して……という繰り返しを3回くらいやってようやく修正が効いてきた。第一段階なんてむちゃくちゃだったんですよ。もうどうにもなんなくて。だから去年とか、僕はずっと引きこもりでしたよ。脳味噌逆さまになってました(笑)」。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2003年05月29日 18:00

更新: 2003年06月05日 18:49

ソース: 『bounce』 243号(2003/5/25)

文/原 雅明