Dropkick Murphys(2)
for BOSTON!!
しかしそれにしても彼らの登場は本当に衝撃的だった。パンテラやマシン・ヘッドなどのメタル勢が堂々とハードコアのスタイルを盗み、どこから見てもラッパーにしか見えない奴らがハードコアを演奏し始めるなか、彼らは混じりっけなし純度100%のパンク・ロックを演奏してきたのだ。初期の音源からすでにスティッフ・リトル・フィンガーズやアウトキャスツなどのアイルランドのパンクっぽさを感じさせたものだが、実際に影響を受けているのだろうか。
「特別〈これはアイルランドのバンドだ〉って意識して聴いたりはしなかったね。正直、みなロンドンから出てきたバンドなのかと思っていたよ(笑)。アンダートーンズなんかも、つい最近アイルランドのバンドなんだって知ったんだ」。
では初期からバグパイプを使用したり、ポーグスのカヴァー(“Billy's Bones”。現在DKMのヴォーカリストであるアル・バーが、加入以前に活躍していたブルーザーズとのスプリットに収録)をしたりしていたDKMは、どこからアイリッシュ感を採り入れたのかと訊いてみた。
「俺もマイク・マコーガン(初代ヴォーカリスト)もアイルランド系で、家ではトラディショナルなアイリッシュ・ミュージックが当たり前のように流れていた。偶然ポーグスを聴いたら、ガキの頃から聴かされてきた音楽をパンキッシュにアレンジしてやっているじゃないか。これは凄いと思ったね。でもみんな勘違いしているのは、バグパイプは本当はスコットランドの楽器で、バグパイプを使っているからアイリッシュというわけではないんだよ。俺たちはアイリッシュのメロディーを採り入れているんだ」。
なるほど、確かにそのとおり。映画「ブレイブ・ハート」にはバグパイプもタータンチェックのスカートも出てくるが、あれの舞台はスコットランドでした。
さて、DKMのオリジナル・ギタリストであったリック・バートン(現在はリック・バートン・アンド・ザ・シャドウ・ブラスターズで活動中)は、すでに80年代中期にはアウトレッツという美メロで知られるパワー・ポップ・バンドで活躍し、数々のシングル、アルバムをリリースしているのだが、ケンがボストンのパンク/ハードコア・シーンに関わるきっかけはどのようなものだったのか。
「当然リックがアウトレッツをやっていたのは知っていたけど、当時の俺にはちょっとソフト過ぎたね。スピード命だったから、エフユーズ、SSD、ジェリーズ・キッズにハマっていた。それからスラップショットが出てきて、次第にOiや初期パンクなどのメロディーがあるものを聴いていった。いちばんの影響はスラップショットだね」。
と言う彼は実際に好きが嵩じて、自身の主宰するレーベル、フラットから、参加バンドがすべてがボストン出身というスラップショットのトリビュート・アルバム『Boston Drops The Gloves』をリリースしている。これは超名盤なので、スラップショットを知らないDKMファンもぜひ聴いてほしい作品だ。もちろんDKMも参加している。
DKMのブレイク以降、リアル・マッケンジーズやフロッギング・モーリーなど、同じような形態で活動するバンドがつぎつぎと注目されるようになってきた。少なからず彼らの成功が影響しているのではないかと思い、訊いてみると……。
「いや、もともとのキャリア自体は俺たちと同じか長いくらいのバンドだ。俺たちが成功したから彼らも売れたってわけではないと思う。それだけのクォリティーの作品を作っていると思うし、それがやっと認められたってところじゃない? まあこういうスタイルのバンドへ人々の目を向けさせるきっかけが俺たちだとしたら、それは凄く光栄なことだ」 。
彼らのもうひとつのルーツといえば、言うまでもなくストリート・パンクにあるわけだが、ツアーのたびに例外なく上り坂にある若手のバンドを同行させることは有名な話である。
「一昨年はフォーゴトンを、今年はピストル・グリップと同じボストン出身のロスト・シティー・エンジェルズを連れていく。俺たちがまだ駆け出しのバンドだった頃、マイティ・マイティ・ボストーンズやスウィンギン・アッターズにチャンスを貰ったことは忘れていないし、同じことを若手のバンドにしてやることが俺たちの役目だと思っている」。
なんとも男気に溢れた答えではないか。またトミー&ザ・テラーズ、ハドソン・ファルコンズ、プロフィッツ、GC5、ブリッグスなど、要注目のストリート・パンク・バンドの名も挙げてくれたので、この機会に聴いてみてはと思う。
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