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インタビュー

Ashanti(3)

新たなるステップへ

 プロデューサーはアーヴとチンク、ゲスト参加も新たにレーベル・メイトとして加わった新人男性ヴォーカル・ユニット=ガンズとジャ・ルール(クレジットされていないが“Sweet Baby”でヴォーカルを披露)のみ、という徹底したファミリー・ビジネス。昨今の業界水準と比べてしまえばかなり地味に聞こえてしまうかもしれないが、早くも人気沸騰中のサマー・アンセム“Rock With U”ではアシャンティの持ち味である清涼感溢れるヴォーカルが最大限に引き出され、〈アーティストを知り尽くした〉手際の良さが際立つし、“Rain On Me”や“Feel So Good”は“Foolish”でのヒット・パターンを彷佛とさせるアイザック・へイズやバリー・ホワイトのクラシックスからのサンプリング、また80'sディスコ調の“Found Lovin'”やセクシーな“I Don't Mind”などなど、それぞれに趣向を凝らした多彩なトラックと、曲によってムードを使い分けるアシャンティの虹色のヴォーカルを聴けば、みずから弾き出した成功の方程式を身を持って体得したプロデューサーとアーティストによる、完結された空間を存分に思い知らされることだろう。当分は外野の入り込む余地はなさそうだ。

「もちろん、誰かがトラックを提供してくれたらきちんと聴くわよ。でも、身内で十分ホットなものを作れるのにわざわざ外に出なくても、ね」。

 なかでもトラック、コンセプト、ヴォーカルなどあらゆる面において圧倒的な存在感を放つのが、リック・ジェイムスの同名曲を新解釈した“Dream Maker”だ。ブルージーなスキットから始まり、時は移って世はモータウン全盛期、片田舎のうらぶれたナイト・クラブでわずかな客を相手に歌い上げる歌姫アシャンティ──という設定も実に粋だし、ここでの歌唱には本当にシビれてしまう。シングル・カット希望!

「いま私たちがやっている〈Sparkle〉っていう映画のテーマに沿うイメージで作ったのよ。昔のブラック・ミュージック・シーンの裏側についての映画なんだけど、アーヴはその映画のなかで流れていててもおかしくないような雰囲気の曲を作ろうとしていたの」。

 76年の同名映画のリメイク版にて、明日のスターを夢見る姉妹R&Bトリオの長女役として主演が決定しているアシャンティ。恋人役として一足先にハリウッド・デビューしているジャ・ルール、そしてこれまではプロモ・クリップで采配を振るっていたアーヴも本作で映画監督デビューを果たす模様だ。

 とにかく、前作を超えるモンスター・ヒット間違いなしの『Chapter II』。そのタイトルに相応しく、今後もアシャンティのサクセス・ストーリーには新たな章節が加えられていくことだろう。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2003年06月26日 16:00

更新: 2003年07月03日 18:36

ソース: 『bounce』 244号(2003/6/25)

文/渡辺 深雪

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