インタビュー

The Neptunes

ついに地上を制覇してしまったスーパー・プロデュース・チーム、ネプチューンズ。彼らはスター・トラックと共に宇宙をめざす!?

スターのためのトラック!?


 コンピレーション・アルバム『The Neptunes Present...Clones』のリリースをもって、ついに本格始動するネプチューンズのレーベル〈スター・トラック〉。そのネーミングの由来について、ファレル・ウィリアムスは次のように説明してくれた。

「スターのためのトラックを作るっていうことだよ」。

 それはそのとおりなのだろう。それはそのとおりなのかもしれないけれど、自分のインタヴュアーとしての拙さを踏まえたとしても、あんまりな回答だと思う。まったく、どこまでルーズな奴らなのだろう――思い返してみれば、ネプチューンズのセルフ・プロジェクトとして注目を集めたN.E.R.D.の『In Search Of...』がリリースされたときも、旧友のシェイがTVゲームに興じている様子をインスタント・カメラで写したような、いい加減極まりないジャケットに度肝を抜かれた記憶がある。地球の背後で仁王立ちするネプチューンズの2人をあしらった今回の〈Clones〉のアートワークにしたって、「Face」誌が選ぶ〈2002年のクールな50人〉で堂々3位にランクしたような人たちがOKを出す代物とは到底信じ難い――それでも、みうらじゅん氏の名言を拝借するならば、「そこがいいんじゃない!」ということになるのだろう。女の子にチヤホヤされるようになったことを理由に〈僕の人生もだんだん良くなってきたみたい〉(N.E.R.D.“Things Getting Better”)とみずからのサクセスを実感するぼんくらコンポーザーは、昨年だけでも全米チャートに18曲ものプロデュース作品を送り込んだ当代きってのカッティング・エッジな才能でもある。

「もともとネプチューンズって名前をつけたのは水がコンセプトだったんだよ。水は流動的だし、どんな音楽でも作れる俺たちのポリシーにネプチューン(水の神)はぴったりだと思ったんだ。人間の身体にしたって成分の60%は水なわけだしさ。でも水ばかりに囚われたくないから、今度は惑星のネプチューン(海王星)に意味を移行させてスター・トラックと命名したんだけどね。宇宙を越えた銀河系の音楽を作るっていう思いが託されているんだ」。

 冒頭のファレルのコメントを補足する相棒チャド・ヒューゴの解説にもあるとおり、ネプチューンズの多彩な音楽性が反映されたスター・トラックのレーベル・コンセプトは、所属アーティストのラインナップを挙げていけばおのずとあきらかになるだろう。そこにはすでにアルバムをリリースしているケリスやクリプス他、フィラデルフィア出身のラッパーで「〈パルプ・フィクション〉のサミュエル・ジャクソンみたいな感覚でライムする」(ファレル)というロスコーP・コールドチェイン、「メキシコ版ブランディ」(チャド)なる触れ込みのヴァネッサ・マルケス、ショーン・ポールにも絶大な影響を与えた「本当にドープ」(ファレル)なヴェテラン・レゲエDJのスーパー・キャット、「フィリー・サウンドとトッド・ラングレンをミックスした感じ」(ファレル)のサウンドを標榜するスパイモブといったロック・バンドまでもが名を連ねる。

「良い音楽にジャンルは関係ないと思ってる。ヒップホップもやるし、R&Bにロックにレゲエ、何でもやるよ。自分たちにできないことはないと思うし、そういう境界線も設けたくないんだ。もちろん売れるレコードを作っていくレーベルをめざしているけど、良い音楽を作ることが大前提だよ」(ファレル)。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2003年09月04日 13:00

更新: 2003年09月18日 17:01

ソース: 『bounce』 246号(2003/8/25)

文/高橋 芳朗

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