MJRの頭脳、KYARAとROCKが語る『3 THE HARDWAY III』の作り方
「言うたら横並びの友達。そこが最初やから、誰がボスとか誰が上とかなくできてる」(ROCK)。
セレクター兼プロデューサーの2人とDJ3人の関係というと、そこに舵を取る存在がいそうにも思えるけれど、ことMIGHTY JAM ROCKに関しては全員がフラットな関係にあるようだ。だからこそ、セレクター兼プロデューサーたるKYARAとROCKが録音に際してDJ3人に頭からディレクションをすることもなく、DJそれぞれがそれぞれの責任で自分の作風を方向づけている。
「歌詞が出来るまでスタジオに入らないし、声も新鮮なうちがいいことのほうが多いから、ほぼ一発録りに近い感じで。ヴァイブス重視でやってます」(KYARA)。
彼ら2人がプロデューサーとして力を傾けているのは、それぞれをどういうオケに乗せるか、そしてそれぞれの楽曲をアルバム全体としてどうパッケージするかという点。「音のキレイさよりも一回聴いた迫力を重視する」(KYARA)という現場での〈鳴り〉を重視した仕様は今までどおりだが、新作『3 THE HARDWAY III』の楽曲の並びには、過去のアルバムを踏まえたこれまでとは異なる趣向が凝らされている。
「これまでのやつは同トラックのものが多かったりして、レーベル・コンピみたいな捉え方もされたんで、今回はアルバムとしてひとりずつの個性がもっと出るようにアルバム単位で考えた」(ROCK)。
「前はミディアムが多かったけど、今回はイケイケ中心で」(KYARA)。
「ミディアムのほうがやりやすいんですけど、僕ら的に難しいところをやってみたいなっていうのがあって、ダンスホールを増やしてみた」(ROCK)。
結果として本作では、ヒップホップやR&Bのサウンド・プロダクションを採り入れた昨今のダンスホールにおけるサウンドの傾向も現れている。それはレゲエだけにとらわれない、若い世代のジャマイカンのトラックメイカーとのコラボレーションによるところが大きいだろう。レーベル、ドン・コルレオーンを引っ張り、ここのところ注目のドノバン“ヴェンデッタ”ベネットへの発注はその一例。そういったジャマイカンとの共同作業は今後も彼らの音源制作の中心となるだろう。
「やっぱり〈新しくレゲエを作っていこう〉ってなったらジャマイカ人しか作れないと思ってるし、作ってはるんはあの人たちだから。それを彼らも自負してるところを僕らも尊敬してる」(ROCK)。
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カテゴリ : インタビューファイル
掲載: 2003年09月04日 17:00
更新: 2003年09月04日 20:39
ソース: 『bounce』 246号(2003/8/25)
文/一ノ木 裕之