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インタビュー

ZEEBRA(2)

進化し続ける存在

 こうした細部にわたる広角な視点と、その効果を見極める鋭い感性は、ZEEBRAがトップに居続けられる要因のひとつ。その感覚は、ラッパーとしてだけでなくFIRS-TKLASの一員として客観的に自分の作品を俯瞰することで、さらに磨かれ、保たれているといえる。だからこそ『TOKYO'S FINEST』は、驚くようなゲストの起用があっても、基本的な立ち位置を変えずして、エンターテイメント性の高い作品として機能しうるのだ。

「俺の意識として、そのへんはプロデューサー的な意識というか。例えばドクター・ドレーがスヌープだったりエミネムだったりを輩出していく感じと同じで、ストリートの奴らをお膳立てしてそのままの光り方で出しちゃうとか、あるいはタレント性の高いアーティストを身近なストリートの立ち位置に置いてみることとか、そういうことは必要だと思っていて。たぶんね、ストリートって何かっていうと、もちろんストリート上でのファンタジーっていっぱいあると思うけど、あるライン以上の嘘はつけない、みたいなことが俺はストリートだと思うのね。そこに適用する範囲っていうのもなんとなく自分でラインがあるわけで。だから、いくら有名人でもこの人はこっち側じゃないだろ、とかはいつも考えてることではある」。

 ところで、ZEEBRAの過去の作品を振り返ってみると、アルバムごとにまったくその姿や印象が異なる。もちろん、確固たる軸の部分はブレてはいないが、曲調や声、フロウなどがアルバムごとに飛躍しているのはあきらかだ。そして今作では、曲ごとに声の出し方からフロウまで、過去最高の振れ幅を記録している。その大きな変化こそがヒップホップの強味であり、楽しみでもあり、ヒップホップが時代と共に進化し続ける音楽であることの証明だともいえる。

「いまの基本のフロウっていうのは、10年前の基本のフロウとは絶対に違うでしょ? (USでも)10年前には基本のフロウでやってた人も、いまはいまのやり方でやってるわけだし、それでいいんだろうなと思う。それが現役であることだとも思ってるし、そこを意識しなくなっていったら、どんどん過去の人になっていく気がするな、やっぱり」。

“I'm Still NO.1”と宣言したファースト・アルバムから約5年。2003年現在、作品、立ち位置、意識、アティテュード、どの面をとっても〈ZEEBRA Is Still NO.1!〉と声を大にしておこう。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2003年09月25日 17:00

更新: 2003年10月02日 18:44

ソース: 『bounce』 247号(2003/9/25)

文/高橋 荒太郎