さまざまなトピックが見事にオーガナイズされた『TOKYO'S FINEST』
『TOKYO'S FINEST』の凄さは、ネタ選び、的確な人材の配置、そして場に応じた本人の振る舞い、とあらゆるポイントに潜んでいる。まずは、シングル“Perfect Queen”におけるロジャー“I Want To Be Your Man”使いで予告済みだった80'sエッセンスの導入だ。レヴェル42“Something About You”をダイナミックに用いた“Touch the sky”でゴージャスに幕を開け、クール&ザ・ギャング“Ladies Night”を催淫剤にしたキュートなパーティー・チューン“ウィークエンド”へ雪崩れ込み……といきなりの80's祭りながら、D-Originuが簡素でプログレッシヴなビートを仕立てた“SUPATECH”、US流儀の早回しソウル・ループを用いた“Teenage Love”(前作に続くスリック・リックの曲名引用)と時代を大きく跨ぐことで一辺倒にはしない。INOVADERのプレミアな“東京's Finest”からU.B.G.の男気ポッセ・カットを挿み、MIGHTY CROWNのSAMI-TとGUAN CHAIが手掛けた圧巻のダンスホール・チューン“burnitup”にはFIRE BALLを迎え、ZEEBRAもズルムケで歌い飛ばす(T.O.Kのイメージがあったとか)。このように、楽曲に応じてフロウから声色までを多彩に変化させる芸達者ぶりが彼の凄いところ(インタヴューの際にZEEBRAが挙げたのはLLクールJの『10』)で、安室奈美恵を迎えた“AFTER PARTY”での呟くようなフロウはありえないレヴェルのヤバさだ。アルバムはKASHI DA HANDSOME→AI→童子-T→般若とマイクが廻る“GOLDEN MIC(REMIX)”で痛快に幕を下ろすが、抑えてきた荒々しさを吐き出すようなZEEBRAの熱さにしてやられる。そんな展開の巧さも含めた手綱捌きが『TOKYO'S FINEST』を傑作たらしめているのだ。
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