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インタビュー

Basement Jaxx

ゴッタ煮のパーティー・グルーヴを編み出すベースメント・ジャックスから新しい招待状が届いた。最高のパーティーは『Kish Kash』の名のもとに!!

まったく違ったことをやりたかった


 UKダンス・シーンの王様、ベースメント・ジャックス2年ぶりのアルバム『Kish Kash』。それは、いつものように海賊ラジオ風のSEで幕を開ける。ただその先に、いつものようなハウス・アンセムのオンパレードは……ない。今回のアルバムは、UKガラージ、ヒップホップ、バングラ、初期レイヴ、プリンス、パンク、スペイン民謡、南部ブルースなど……これまで以上に雑多なキーワードで溢れた一大パーティー・アルバムになっている。彼らの名曲“Fly Life”よろしく世界中のクラブを飛び回り、モンスターのように古今東西の文化を吸収した成果がついに結実したのか。まずはマッチョなメガネ君、フェリックスからDJ的な観点でその経緯を。

「例えば、96年くらいにベースメント・ジャックスが挑戦したラテン・テイストのハウスって当時は目新しかったけれど、いまやレコード屋には何千というラテン・ハウスのレコードが置いてあるだろ。最近のハウス・シーンはちょっと廃れてきているし、そういった状況も含めて、まったく違ったことをやりたかった。それで周りを見渡してみたら、ロックとかネプチューンズのサウンドのほうが断然おもしろいな、と思ったんだ」(フェリックス)。

「このアルバムを作っている時は、ネプチューンズ以外にもティンバランドやドクター・ドレーのようなヒップホップをたくさん聴いたな。あとはアンダーグラウンドなUKガラージとかね」(サイモン)。

 US産ヒップホップ/R&Bからの影響。それは、「リミックスのオファーはほとんど断る」という彼らが近年、ミッシー・エリオット“4 My People”やジャスティン・ティンバーレイク“Like I Love You”などのリミックスに張り切って取り組んだ事実からもあきらか。一方で、地元のUKガラージ・ビートも忘れちゃいない。地下から才能を次々輩出する近年のUKガラージ・シーンだが、とくに今回ゲスト参加した弱冠18歳の成り上がりMC、ディジー・ラスカル(その経歴については別項を参照)の持つ〈粗さ〉には相当刺激を受けたらしい。

「ディジーの曲って音質は良くないけど、最小限の機材環境で作っているっていうところがパンク精神を感じられて大好きなんだ。あと、彼のパンチのあるMCって、ひとつの楽器みたいなものだし」(サイモン)。

 ディジーの強烈なMCが印象的なインド調ガラージ・チューン“Lucky Star”を含め、今回はゲストの人選も多彩で、挑戦的だ。そこには黒い女性マルチ・プレイヤーのミシェル・ンデゲオチェロや、イン・シンクのJC、そしてゴス・パンクの女王=スージー・スーなどが名を連ねる。とくに、オラオラ系パンク・ビートの上でスージー・スーが雄叫びを上げる“Cish Cash”には驚かされた。

「“Cish Cash”はパンク・スタイルの曲だけど、ベースラインはレイヴ・ミュージックっぽいだろ。90年、91年くらいに、俺らがレコードを作りはじめたばかりの時のレイヴ・サウンドって、この曲みたいなシンプルで攻撃的なベースラインが流行っていたんだよね。それはいまのUKガラージのベース・サウンドにも共通するものがある」(サイモン)。

▼ベースメント・ジャックスの作品。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2003年11月06日 11:00

更新: 2003年11月06日 17:27

ソース: 『bounce』 248号(2003/10/25)

文/リョウ 原田