インタビュー

Basement Jaxx(2)

自分のお茶は自分で入れる

 レイヴ、パンク、UKガラージをベースのグルーヴで呑み込む……なんて不良だ。唖然としていると、さらにサイモンが煙草をふかしながら〈ロック野郎〉宣言。

「俺にとってのギター・ヒーローは、ジミ・ヘンドリックス、テン・イヤーズ・アフターのアルヴィン・リー、エアロ・スミスのジョー・ペリー、フランク・ザッパ、ジョニー・マー……そんなところかな? 俺は学生の時にロック・バンドを始めて、その後ロンドンに出てきてからは、ジャズ・ファンク・バンドで活動をしていたんだよ」(サイモン)。

 スパニッシュ調ギターのテーマが印象的な“Tonight”、シカゴ・ハウスがデルタ・ブルースと融合した“Super Sonic”など、いままではあまり表面化しなかったサイモンのギタリストとしての一面も今回は垣間見られる。一方、相棒のフェリックスはヴォーカリストとして弾けている。彼が女声で歌い上げるロマンティックなデトロイト・テクノ・チューン“If I Ever Recover”では、ロンドン・オーケストラの荘厳なストリングスが涙腺を直撃する。

「僕がひとりで曲を作るとこういう感じになるな。ラリー・ハードやミスター・フィンガーズが好きだからね」(フェリックス)。

 他にも、「インド、マレーシア、スコットランド、あとアメリカのインディアンの音楽、日本の伝統音楽も大好きだよ。琴のビヨーンって音とかね(笑)」(フェリックス)という具合に、アルバムにはまだまださまざまな要素が詰め込まれている。ただ、この驚異的な雑食サウンドに一本筋を通しているのは、デビュー当時と変わらぬ〈グルーヴ愛〉と〈心意気〉のようだ。

「ファンキーなものが絶対的に好き。やっぱり横の揺れがほしいし、そっちのほうがセクシーだろ(笑)。あと、ベースメント・ジャックスの曲に入っているクレイジーなノイズやSEは、いわばトレードマークみたいなものさ。もともと、いろんなサウンドが取っ散らかってるのが大好きだからね。本当にいいハウス・ミュージックっていうのは、そういうフリーキーな部分を持っているんだ」(フェリックス)。

「俺らは自分たちで作曲からトラックダウンまでをやるし、自分のお茶は自分で入れる。つまり、1から10まで自分たちで全部やりたいんだ。10年以上、独学でエンジニアリングをやってきて、たまに〈これはたぶん専門的には間違った手法なんだろうな〉とも思う。だけど、その間違いから生まれたサウンドこそ、みんなが愛してくれるような〈ベースメント・ジャックス・サウンド〉になっているんだよ。自分たちのフィルターを通すことによってまったく違う音楽が生まれたわけだよね」(サイモン)。

 持ち前のマッド・ハウス根性と、DIY精神で新たな境地『Kish Kash』を切り開いたベースメント・ジャックス。最後に、音の開拓者としての今後の抱負を一言。

「人生にいつも刺激を感じて、興奮を覚えていられる限りは、常に新しいサウンドに挑戦していくと思うよ。そうじゃなくなったら、場末のキャバレー・バンドみたいになっちゃうかもしれないね(笑)」(フェリックス)。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2003年11月06日 11:00

更新: 2003年11月06日 17:27

ソース: 『bounce』 248号(2003/10/25)

文/リョウ 原田