彗星のように現れた18歳、ディジー・ラスカルって何者だ??
偉いぞ、ベースメント・ジャックス!という気分だ。過去最高傑作『Kish Kash』の出来はもちろんだが、ようやくディジー・ラスカルが日本でも紹介されるきっかけを開いてくれたわけだから。2002年の俊英=ストリーツをエミネムに例えるなら、ディジーは50セントみたいなもの……というアレは強引だが、大器ぶりでは間違っちゃいない。ディジーは東ロンドン出身の弱冠18歳。ソー・ソリッド・クルー以降に頭角を表したMC集団のひとつ、ロール・ディープ・クルーを率い、すでにアンダーグラウンドでは多大な期待を集めていたMC/トラックメイカーだ。「小さな頃から、銃撃や強盗、いろんなものを間近で見てきた」との発言どおり、相当ハードな環境に育ってきたようだが、「周りでどんなに気狂いじみたことが起こっていても、俺は音楽に固執してきた」のだという。2003年に入って、モア・ファイア・クルーのダークコアなベース・チューン“Still The Same”をプロデュースし、ラップでも客演した後、7月に『Boy In Da Corner』でデビュー。独創性に富んだリリック世界も高く評価されているようだが、彼が革新的なのはUKガラージとヒップホップをチープかつトリッキーに配合したトラック面だ。ブレイクビーツ音楽が、レプラゼントの“Who Told You?”~ソー・ソリッドの“Oh No”を経てまた新しい身のこなしを覚えたような、それ級のビートが次々と押し寄せる恐ろしい仕上がりになっている。
史上最年少で〈マーキュリー・プライズ〉を受賞したことも驚きを持って受け止められているディジーだが、延々と過去の名前だけでシーンを語ろうとするのでない限り(昨年のミス・ダイナマイトも含めてね!)、〈先物買い〉なんて言葉は妥当じゃない。『Boy In Da Corner』は、全音楽ファンが真っ先に聴くべき一枚だ、と断言する。それほどのものです。
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掲載: 2003年11月06日 11:00
更新: 2003年11月06日 17:27
ソース: 『bounce』 248号(2003/10/25)
文/出嶌 孝次