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インタビュー

ピアノと私、ピアノとソウル

〈ピアノと私〉――アリシア・キーズのデビュー作は、そんなタイトルの曲(“Piano & I”)で幕を開ける。つまりそれはピアノと彼女自身が一心同体だという所信表明。鍵盤楽器を弾くR&B系の女性シンガー・ソングライターは多数存在するが、ピアノ、しかも生ピアノを弾くことをウリにしているのは、近年ではアリシアぐらいだろう。だが振り返ってみれば、昔からそうした〈ピアノと私〉な知的な佇まいの才媛は少なからず出現しており、時に裏方に回りつつ静かにシーンを牽引していたことに気付く。古くはニーナ・シモン、それに何といってもロバータ・フラックはその先駆的存在で、特にアリシアと同じく正規の音楽教育を通過したロバータは、シンプルなピアノ弾き語りで新しいソウルの時代を歩み始めた。同じくジャズ方面から登場したパトリース・ラッシェンもアリシアに並ぶ美貌で鍵盤楽器をプレイし、メロウな名曲を連発。他にも、“Piano In The Dark”をヒットさせたブレンダ・ラッセルなどもピアニストである自分をアピール……と、いずれもピアノと我が身を一体化することで美しい音世界を築き上げてきた。そして……新作のジャケットで右半身を鍵盤で覆ったアリシアは、そんな先達に負けじと(?)今回もピアノに自身の命を託している。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2003年12月04日 16:00

更新: 2003年12月04日 18:32

ソース: 『bounce』 249号(2003/11/25)

文/林 剛