インタビュー

Missy Elliott(2)

ポジティヴなメッセージ

――『This Is Not A Test!』というタイトルはどこから来たもの?

「よく、ラジオで〈これはテストです〉っていう放送があるじゃない? テストってことは、ホンモノじゃないってことでしょ。それを聞いてて、自分のアルバムのタイトルにしようかしらって思ったの。これはリアルでシリアスなもので、エマージェンシーってことなのよ。それと、シュガーヒル・ギャングの曲(“Rapper's Delite”)の〈What you hear is not a test〉っていうラインがたまたま耳に入ってきたの。短い間にこのフレーズを何回も聴いたから、これをマネすることにしたの」

――コンセプトはありますか?

「このアルバムは、現実に目覚めること、そしてみんなに注意を促すものね。楽しみながら、かつ自分たちの日常に起きてることについて語っているの。エンターテイナーとして、私たちはみなロールモデルなの。もし、自分がドラッグ・ディーラーだったってことを語りたかったら、そこから抜け出すには、殺されるか、刑務所に入るしかないってことまで言わなければいけないのよ。自分のストーリーを語ってもいいんだけど、その結果どうなるかってことまで語らなければいけないと思うの。このアルバムでは、説教って形でなく、何曲かでそういうことについて語ってるわ。楽しくて、ダンスもできるような曲で、メッセージがあるものを作りたかったの」

――キッズたちは、無意識にそのメッセージを受け取るわけですね。

「そうなの。“Self Distraction”って曲が昔あって、KRS・ワンとかMCライトとかいろんなラッパーがフィーチャーされてたんだけど、政治的すぎるとか、ポジティヴすぎるとは思わなかったわ。ホットな曲って思って、私たちは彼らの言うことに耳を傾けてたわ。このアルバムはそういう方向性を持ったものなの。ダンスしたくなるホットなビートがあるけど、ただパーティーってわけじゃなくて、ポジティヴなメッセージもあるのよ」

――あなたは前作でポジティヴなメッセージを投げかけていましたが、ヒップホップ・コミュニティーはこの1年で変わってきていると思いますか?

「〈何かが欠けてる〉って私が気付かせたと思う。でも、私はたったひとりの人間だから、みんなに〈ケンカや言い争いはやめよう! 曲の中だけに止めておこう〉って言わせるのには、もっと多くの助けが必要なのよ。これからもうちょっと時間がかかるわね。なぜって、多くの男性MCたちは〈楽しもうよ〉っていうのが男っぽくないって感じてるからなのよ。いきなり、〈みんなで仲良くして、兄弟、家族のようになろう〉なんて言ったら、ファンがビックリするかもしれないって恐れてるのよね。だから、わかってもらうには時間がかかるし、ミッシー・エリオットだけじゃできないわね」

 インタヴューでは〈新作は前作以上にメッセージ性が強い、リアルでシリアスな作品〉と強調されていたが、実際にアルバムを聴いてみると、いわゆるメッセージ性の強い曲は思っていたより少ない。また、そういった曲も説教くさくなく、他の曲同様、楽しいヴァイブを持った作品に仕上がっている。メッセージ性の強い曲をこんなふうに聴かせることができるのは、ホント、ミッシーだけです。

▼豪華ゲスト陣の作品(シンガー編!)。

▼豪華ゲスト陣の作品(レゲエDJ編!)。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2004年01月15日 13:00

更新: 2004年01月15日 17:29

ソース: 『bounce』 250号(2003/12/25)

文/松田 敦子