インタビュー

Christina Milian(2)

前作よりも冒険した仕上がりよ

 サウンドはことごとく変化し、デビュー作での北欧テイスト濃厚なポップR&Bとはあきらかに一線を画している。プロデューサーにウォーリン・キャンベルやコリー・ルーニー、ブライアン・マイケル・コックスらを迎えてエッジの効いた米国産R&Bを展開。新鋭ポリ・ポールをプロデューサーに起用したダンスホール・レゲエ調のファースト・シングル“Dip It Low”に至っては、タイトルからすでに衝撃的だ。これはほとんど若手の二大巨頭、ビヨンセ/アシャンティへの宣戦布告だろう。現に彼女のヴォーカルは格段に上達している。

「精神的には本当に鍛えられたと思う。音楽に対する自信がついたのよね。特にヴォーカル面。他の人の作品を聴いて研究して、自分がめざす歌唱を追求したわ。レコーディングでも、前回のようにスタジオで不安になるようなことがなくなったの。実を言うと以前は私、自分にあまり自信が持てずにいた……でも、もうチャレンジする前に怖がるのはやめようと努力したの。だから今作ではいろいろな挑戦をしたのよ。前作とは違う、冒険した仕上がりになっていると思うわ。前作はほとんどアップテンポが中心だったんだけど、今作はアップ系、ミッド系、バラードもバランス良く入っているわね。まるでローラーコースターみたいにさまざまな曲調を組み込んでる」。

 はつらつとした語り口や音楽へのひたむきな態度は、デビュー当初とまるで変わらない。むしろ悲願の本国デビューを前にして、彼女のつぶらな瞳はますます無垢に輝いている。大胆な変貌はほんの入り口に過ぎなかった。ちなみにアルバム・タイトル『It's About Time』に込められた想いは以下のとおり。

「アメリカでよく使う言葉よ。待ちに待った何かがようやく出来上がる時なんかに使うの。まさにその通りでしょ? そして〈タイミングの大切さ〉という想いも込めているの。人生って何事もタイミングだなって痛感するから」。

 どうやら『It's About Time』はただのセカンド・アルバムではない。本人の意識のうえでも、これが勝負作のはずだ。彼女の〈タイミング〉は目前に迫っている。

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掲載: 2004年04月01日 17:00

更新: 2004年04月08日 18:13

ソース: 『bounce』 252号(2004/3/25)

文/梅岡 彩友美