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インタビュー

Christina Milian

愛くるしい笑顔と瑞々しいヴォーカルでポップ・シーンの頂点に躍り出たデビューから3年。魅惑の変身を遂げたクリスティーナ・ミリアンがニュー・アルバムをリリースした。そのキュートな唇で語ってくれたのは……

ずっとイメチェンしたかったのよ


 念のため申し上げておくと、こちらの女性はクリスティーナ・ミリアン。同姓同名の新人ではない。大きめのキャスケットを無造作にかぶり、愛嬌たっぷりの笑顔をふりまき、小動物のような愛くるしい仕草、いたずらな振る舞いで会う人すべてを魅了していた素朴なポップR&Bアイドルの――クリスティーナ・ミリアンである。しばらく見ないうちにキャスケットはピンヒール、無邪気な仕草は色香へ取って代わられ、すっかりビヨンセ/アシャンティ路線に〈参戦〉した様子だ。10代から20代へ向かう女性の数年間は時に劇的な変化をもたらすけれど、クリスティーナもまた然り。今回登場した2作目『It's About Time』は、いろいろな意味で鮮烈なアルバムとなった。

「ずっと前からイメチェンしたかったのよ。だって過去のジャケット写真や雑誌なんかを見ていたら、いくら違うポーズや髪型をしていてもまったく雰囲気の変わりばえしない自分に気付いちゃって。だから今度の新作ではどうにかして成長した私をみんなに認めてもらいたかった。18歳のままのクリスティーナではなく、22歳の大人の女に成長した私をね!」。

 実際のクリスティーナがどうかといえば、率直に言って拍子抜けするほどフレンドリーで変わらない。デビュー当初のように飾り気のない、普通の西海岸の女の子という雰囲気だ。

「ホントいうと大人の女になるってどういうことか、よくわからないけど。我ながらいまだに自分が13歳くらいのコドモなんじゃないかって感じるときもあるし。ただこの2年間で成長したことは確かね。責任感とか、家族や他人への思いやりを自然な流れで学んだわ」。

 事実、彼女は今回のセカンド・アルバムで自身の内面を深く掘り下げることに成功している。プロデューサーをはじめとする周囲のオトナたちの色が感じられた〈お人形さん感〉溢れるデビュー・アルバムと今度の新作では、彼女自身の存在感は比べものにならない。

「一冊のアルバムで例えるなら、デビュー作は表紙。セカンド・アルバムは本編の第一章っていうところね。表紙で軽く表面的に自己紹介して、第一章ではもう少し深く、自分について語りはじめている感じ。そういう意味で、前作よりさらにパーソナルな内容といえるかな。前よりも自由な気持ちで素直に、オープンに胸の内を描くことができたと思うわ。それにこちらがオープンに表現すれば、リスナーだってきっと、私の曲に感情移入しやすくなると思うのよね。なかでも“Oh Daddy”っていう曲は個人的よ。離婚で父親が家庭を去り、母や妹や私が辛い思いをした経験を綴った曲なの。でも、それも運命のひとつだと受け止めて、何とか乗り越えたけどね」。

 クリスティーナ・ミリアンは米ニュージャージー州生まれ、メリーランド育ちの22歳。10歳からミュージカルやドラマ、映画の声優などで活躍。2000年にフィーチャーされたジャ・ルールのシングル“Between Me And You”が全米チャート1位となって話題をふりまいた。そして2001年にシングル“AM To PM”で正式デビュー。やはり全米チャートで1位を記録している。

 しかしその後ヨーロッパと日本でヒットしたファースト・アルバム『Christina Milian』は、国内情勢の悪化により本国アメリカではリリース中止に。正式デビュー前からの布石を経て、つとめて順調な道のりを歩んでいただけに彼女を気の毒がる声も少なくなかった。だからこそクリスティーナも、このセカンド・アルバムが本国アメリカでようやくファースト・アルバムとしてリリースされることに感慨もひとしお、という想いを打ち明けずにいられない。

「〈9.11〉の件があってアルバムのリリースが中止されてしまったわけだけど、この時に命を落とした人たちに比べれば、アルバムのリリース中止なんて全然大したことじゃないわ。もちろんアメリカでのリリースを期待していたから、とても残念に思ったけどね。それで今回は、コンセプトというわけじゃないけれど、ひとつの大きな目標を掲げたのよ。それはアメリカで私をより深く知ってもらいたいということ。アメリカでのリリースは心待ちにしていたことだからね、やはり本当に新鮮な気持ちで臨んでいることは確かだわ。前作と楽曲の印象が変わったから、もちろんアメリカ以外の国でも楽しんでもらえると思うし。新しいファンができるんじゃないかって、密かに期待しているのよ」。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2004年04月01日 17:00

更新: 2004年04月08日 18:13

ソース: 『bounce』 252号(2004/3/25)

文/梅岡 彩友美