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インタビュー

Twista

13年のキャリアを誇るというこの舌倫オヤジは……自称リリカル・サイコパス、世界最速のフロウで過去最大級のビッグ・ヒットを記録中のトゥイスタだ! 長年の苦闘や地元シカゴへの愛までゆっくりと語ってくれたぞ!!

オレは柔軟性のあるラッパーさ


 USではそこそこの成功を収めてきていたとはいえ、日本においてトゥイスタというラッパーが取り上げられる機会はこれまで皆無に等しかった。話題になるのは、〈ギネスブック認定の世界一の早口ラッパー〉という点ばかり。どこへいってもこの宣伝文句がつきまとうことに本人はいささかウンザリしてはいなかったのだろうか?

「何かひとつのことを極められたことを誇りに思う。アーティストとしてはいい宣伝材料になるしね。各スポーツ界のチャンピオンとか、さまざまな世界の逸材と同じ本に載ったなんて信じられねえよ。オレがこの世を去った後も、ギネスブックを見た人たちがオレの存在を知ってくれるなんてスゴいことだぜ! ただ、今回のアルバムでは高速ラップ以外も楽しめるアルバムにしたかったからこそ、ゆったりした曲も収録したのさ。自分でも柔軟性のあるラッパーだと思うよ」。

 と、本人はさほど気にしていない様子。なので、世界一に認定された測定法とはどんなものなのかも訊ねてみた。

「言語療法士が録音したテープをスローモーションでかけて、 1分あたりの音節を数えて測定するらしいよ。オレの場合は〈526音節/分〉で、その後音節の部分を増やしてみたら〈約600音節/分〉という新記録が出たんだ」。

 へえ。それがどの程度凄いことなのか正直よくわからないが、とにかく今回のトゥイスタのアルバムが凄いことになってるのは間違いない。そのアルバム『Kamikaze』が過去の作品とはちょっと違うという気配は、アルバム・リリース前からあった。先行カットされたシングル“Slow Jamz”が全米シングル・チャートを席巻していたからだ(のちに1位まで到達)。そして放たれたアルバムは初登場で全米1位を獲得。アルバムを聴いてみれば、高速ラップをウリにした内容ではなく適材適所なR&Bヴォーカルと、深みと広がりのあるネタ感の強いトラックがトゥイスタのラップと極上の形で溶け合う素晴らしい作品だと感じるはずだ。「自分のことをラッパーというひとつの楽器パートとしても捉えているから、可能な限り音楽のなかに溶け込むように心がけている」という注意点が、今回は理想的なほど形になっている。

「アルバム全体として共通したフロウは保ちたかったけど、全曲似たような内容になるのだけは避けたかった。だから各収録曲を〈トゥイスタらしい音〉に仕上げた。シェフ役のオレが16種類のレシピを披露しているんだ(註:日本盤は全18曲)。前作『Adrenaline Rush』をヒップホップ・クラシックだと思ってくれるリスナーがいるとしたら、新作は〈ヒップホップ・クラシック第2弾〉になるだろうな。今回はゆったりしたラッピング・スタイルを採り入れ、いままでとは違うアプローチの楽曲も収録した。つまり、このアルバムは13年間やってきたトゥイスタというアーティストとしての集大成なんだよ」。

 アルバム・タイトルも考えがあってつけたようだ。

「神風がオマエらの所でも大旋風を巻き起こすぜ! トゥイスタのラップは体当たりさ。この作品はオレの〈リリックの仇討ち〉だということを伝えたかった。オレはこれまでの人生で、いろいろ痛い目に遭いながらも命を削って前進してきた。自分の目標を達成するためにはいくらか犠牲を払うことだってあるし、信念と耐久力で頑張らなきゃならない……っていうサブリミナル・メッセージも込められてるのさ。このゲームでやっていくには、自分というコマを進めていかないと何も起きないからな。この13年間、もうダメかと思ったことも何度かあったけど、ここまでやってきた甲斐があっていまはホントに嬉しいよ」。

▼『Kamikaze』に参加したアーティストの作品を一部紹介

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2004年04月15日 12:00

更新: 2004年04月15日 19:20

ソース: 『bounce』 252号(2004/3/25)

文/高橋 荒太郎